向日葵は何年経っても枯れない。【黄】 ページ27
____6月、初夏。
もうとっくに桜も散り、木には葉っぱが付いていて もうすぐ夏が来る とそれが揺らめいて知らせている。
気温も春より高くなっている。
……君と離れ離れになってから、6回目の夏が始まろうとしていた。
あのとき、僕が意気地無しだったから。
告白できたであろう瞬間はたくさんあったのに、伝えることができなかった。
進学先は別々で、彼女は地方の学校に進学するとかで引っ越してしまい、その後連絡も取れない。
きっと、彼女は可愛いから 彼氏ができているんだろうな。
もしかしたら、もう結婚しているかもしれない。
6月、ジューンブライドか。
「A……」
口の中だけでそう呟き、昔を懐かしむ。
僕も一人暮らしを始め、もちろん部屋にはエアコンがついている。
でも、あの古めかしい扇風機を捨てられないのは、暑がりな君が来てくれるんじゃないかって 心のどこかで期待しているから。
「……帰るか」
馬鹿らしくなってきた。
未練タラタラな女々しい自分も、彼氏がいるかもしれない女の子を想うのも。
あのとき、僕が勇気を出して 告白できていたならば。
今頃、僕の隣にいるのは彼女だったかもしれない。
そんな女々しい思いを捨てるように足を動かす。
いくら願っても、君には逢えない。
それが僕の意気地無しの結果であり、そういう運命なのだ。
____だから、その後ろ姿を見た時は、目を疑った。
「Aっ……?!」
瞬時に走り出し、学生時代には及ばずとも、歩いている女性ひとりに声が聞こえるくらいの距離、すぐに追いついた。
こちらを振り向いたのは あの日見た"少女"の君ではなく、もうすっかり大人の"女性"になっていた。
はにかむような表情は、間違いなく君だ。
僕が知らない間になにかあったのだろうか。
そのくらい、綺麗になっている。
よく言われる『女の子らしさ』を僕の部屋では全て捨てていた君が、可愛くて綺麗な女性に。
でも、そんなことを聞くよりも、考えるよりも、1秒でも早く君に逢って話したい。
さらに距離を縮めるように足を進めると、
「A」
「るぅとくん、なの?」
切れた息を整えながら、君の肩に手を置く。
大人びたけれど、身長差はやっぱり変わってなくて。
「……るぅとくんだよね」
「Aっ……、会いたかった」
僕の言葉に、Aはゆっくりと目を細めた。
勢いで「会いたかった」なんて言ってしまったけれど、
「私も、会いたかった」
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虹の根元付近に生息しているアイ(プロフ) - 蝉-セミ-さん» 蝉さんありがとうございます!!私の書く💛さんの良さを分かっていただけて嬉しい限りです😭これからも喜んでいただけるよう更新頑張ります!笑 (2022年10月15日 12時) (レス) id: 98cb88ece4 (このIDを非表示/違反報告)
蝉-セミ-(プロフ) - 久しぶりに占ツクにきたら短編集更新されてて嬉しかったです。やはりアイさんの書くちょっと大人っぽくて意地悪な💛くんが好きですw🤣 (2022年10月15日 1時) (レス) @page35 id: 19d8717651 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根元付近に生息しているアイ(プロフ) - わっふるのとっぴんぐさん» 返信遅くなり大変申し訳ありません!そう言っていただけて本当に嬉しいです、モチベーションになります…😭 ありがとうございます! (2022年10月12日 20時) (レス) id: 98cb88ece4 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根元付近に生息しているアイ(プロフ) - みぃなさん» 返信遅くなり大変申し訳ありません!私は後遺症もなく元気です☺️ ご心配ありがとうございます( ; ; ) (2022年10月12日 20時) (レス) id: 98cb88ece4 (このIDを非表示/違反報告)
わっふるのとっぴんぐ(プロフ) - コロナ大丈夫でしたか!?!?もうこの短編集最高すぎて…!!主さんのペースで更新がんばってください!(*´`) (2022年8月10日 17時) (レス) id: b8d201f8af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ x他1人 | 作成日時:2022年3月29日 22時