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「____A」
私の名前をただ呼んで、こちらを見つめる王子様。
言いたくても言い出せない、そんなもどかしさを秘めた瞳は 美しく揺らめいていた。
ここで私が先を促すのは無粋だ。
彼の紡ぐ言葉の先を待っている。
部屋が静寂に包まれたが、"その瞬間"は遠からず訪れた。
「……Aが誰を選ぶか、選ばないかは分からない。でも、」
「____僕を選んでほしいな……なんて」
思っていた言葉とは少し違ったため、思わず呆気にとられてしまう。
てっきり告白のような類のものかと思っていた。
『好き』とか、あるいは『棄権します』みたいな。
「____どうして、そんなに選んでほしいんですか」
我ながら意地の悪い質問だなと心の中で苦笑したが、これこそ 今の王子様の言葉に繋がる、私にとって今聞かなければいけないことだった。
「それ聞いちゃう?」
彼も微苦笑しながら、頬をかいている。
「僕、なぜかAを見ていると無性に守りたくなっちゃうの。守りたいというか……
"僕のものにしたい"」
瞬間、言葉で殴られたような衝撃が刻まれた。
やっぱり、やっぱり王子様は私のこと、物としてしか思っていなかったんだ____そんな思考の海に彼のせいで溺れそうになったとき、そんな私に手を差し伸べたのも彼だった。
「まって」
彼の言葉に思索を遮られ、少しだけ顔を上げると
彼の視線は私の左手に集中していた。
「指輪……?」
「四葉のクローバーの花言葉、Aが言っていた"幸運"だけじゃないんですよ」
その言葉を聞いて、弾かれたようにさらに顔を上げると 王子様は焦ったように口を開いた。
「____"私のものになって"……って。ちなみに、"復讐"なんて意味もあるんですよ?」
「他者への牽制……復讐……私のものになって……?」
やたらと物騒なワードを並べ、口に出しながら頭の中で整理していく。
『僕のものにしたい』的な言動が多かったのはいわゆる匂わせのような、そういうことなのだろうか。
「またズレちゃったけど、どうしてそんなに選んでほしいか、だっけ」
「っはい、そうです」
考えるより先に口が動き、彼の返答を求める。
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虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡糖さん» こちらのほうでもコメントありがとうございます(T T) 以前もらった泡糖さんのコメントが本当に嬉しく、今でも活力になっているので またコメントくださって嬉しいです💕 これからも更新頑張ります! (2022年3月4日 21時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡糖(プロフ) - 更新ありがとうございます!今回も読んでいて楽しかったです! (2022年3月4日 21時) (レス) id: eaad00c70c (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん 本当にいつもコメントありがとうございます✨ 大丈夫ですよ!笑 あれは完全にゴキブリを意識してます、気づいていただけて嬉しいです……笑 (2022年2月10日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - カサカサ…でゴキブリだと思ってしまった私は末期ですね(遠い目) (2022年2月10日 0時) (レス) @page25 id: 7687e77697 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん いつもありがとうございます!! 切り方もお誉めもいただき光栄です……ありがとうございます(T T) 今後の展開に乞うご期待です!笑 (2022年1月30日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ | 作成日時:2022年1月13日 18時