王子様に仕えるのは想像以上に大変です。【黄】

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これまでずっと無言だったころん様が、急に『取引をしよう』と。



それには王子様も｢なんのことですか？｣とわけが分からなさそうだった。




｢Aと、は……ハグさせてくれたら行かせてあげる｣



｢は？｣



思いもよらなかったであろう要求に、王子様も｢は？｣しか言葉が出ないのだろう。


私もこのよく分からない要求は 王子様もいるし呑めそうにないが。




｢ほら、僕とAはハグが日課なわけ。あれ、知らなかった？｣




急に煽り口調になり、｢あれあれ、やっぱり知らないの？｣などと王子様を煽っている。


これ以上王子様の癪に障るようなことはやめてくれ……と念を送っても ころん様は煽るばっかりだ。



そして、私の目の端に映るのは さとみ様、莉犬様、ジェル様。
三人でなにか話し合いをしている。



すると、その三人に動きが。



｢ころちゃん、ちょっと耳貸して｣



莉犬様がころん様に歩み寄り、ひそひそとなにかを話している。



｢……なるほどね。まぁいいよ、それで｣



一体なんの話をしていたのか分からないが、どうやら話がまとまったようだ。



私と王子様だけ蚊帳の外のような気がしなくもないが。



｢るぅとくん、ちょっと耳貸して｣



……今度はころん様が、王子様に歩み寄りひそひそ話をしている。


私だけ蚊帳の外なこの状況。




｢なるほど……まぁいいですよ、これ以上なにか言われても面倒なので｣


｢……じゃあ今夜よろしくね、A｣



なんのことですか、と聞こうにも もう三人は去っていってしまった。


謎が残りながらも、王子様は｢行きましょう｣と先を歩く。



｢……あの、先程のは？｣



｢ああ、ころちゃんに今夜だけ譲ったんですよ。せっかくなら朝までAを独り占めしたかったのに｣



……イマイチよく分からない。


これ以上つっこんで聞いても 多分今話してくれたものが全てだろうから深追いはしないことにした。



｢……そういえば、街 と仰っていましたが どこの辺りでしょうか｣



唯一聞いていなかった、行先。

街 までしか聞いていなかったが、もしかしたら身売りされるのでは……なんて不安もなくはないが 王子様に限ってそんなことはしないだろう。というかそう信じたい。



｢んー、それはまだ秘密。ざっくり話すとしたら、美味しいもの食べて綺麗なもの見にいくって感じですかね｣



｢わぁ、楽しみです……！｣



……思わず本音が漏れてしまい少し恥ずかしい思いをしたのは内緒。

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