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「さとみ先輩と、よくお話されたりしますか……?」
「んー、まぁ話すよ」
「う、うそ……やだ、恥ずかしい」
口に手をあてて恥ずかしさに耐えているAさんも可愛い____ではなく、なんなんだその反応は。
無性に腹が立つ。それは仕方のないことだろう。
想い人が別の男に想いを寄せ、しかも僕の前で顔を赤くしている。
誰が悪いわけでもないのだが、堪えようのない怒りの矛先は 目の前の君に向いた。
「……好きなの?」
「えっ、好き、というか……なんというか、えっと……」
Aさんにしては歯切れが悪い。
少々トゲのある言い方をしてしまったが、さすがの僕でも怒りを抑えきれなかったということで。
「で、さとみくんが好きだからなに?連絡先ほしいの?」
我が友、さとみくんは異様にモテる。
連絡先目当てに僕に近付いてくる女の子も稀にいて、こういうことには慣れているつもりだ。
でもAさんが"そっち側"の人間なんて、残念でならない。
「ちが 、違うんですっ……!」
____彼女の大きな声は、はじめて聞いたかもしれない。
ぼんやりとしていた空気を断ち切るように、彼女の声が響く。
「違うって、なにが____」
「私、のこと……可愛いって、思いますか」
「は?」
突然すぎる質問に、戸惑いを隠しきれない。
彼女はうつむき気味にこちらの様子をうかがっており、また『可愛い』と思ってしまい____、
「ぁ……ん?」
パズルのピースが、ゆっくりとはまっていく感覚。
瞬間、昨日の会話がフラッシュバックした。
でもわからない。ぬか喜びは嫌だ。
ただの確認かもしれない。そう考えるとテンションが一気に下がる。
「だからっ、私、可愛いですか……?」
だが、君の表情を見て決意を固めた。
ぬか喜びであれなんであれ、伝えるチャンスなのではないか。関係が崩れるのがこわい?そんなの恐れていたってはじまらないではないか。
覚悟を決め、息を吸う。
「____可愛い。可愛いよ、すごく。好きな子が可愛く見えない人はいないよ」
僕だって恥ずかしい。
愛を伝えたことなんてないし、意趣返しみたいになってしまったかもしれない。
信じられないような顔をする君を見て、抱きしめたくなった____否、抱きしめてしまった。
細いな、折れちゃいそうだな、守りたいなと 次々にいろいろな感情が湧いてくる。
「ぇ、るぅとくん、私のこと……」
「好きだよ。大好き」
声を震わせてそう問う君を、さらに強く抱きしめて肯定する。
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ぴーち - とってもおもしろかったです!アイさんの作品全部見てきます(`・ω・´)ゞ (2022年6月5日 6時) (レス) @page10 id: 2e0541f151 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - ゆうさん» ありがとうございます;; これからも頑張ります!💪🏻 (2022年5月11日 13時) (レス) id: 4c9053914b (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 完結おめでとうございます!すごく面白かったです。更新お疲れ様でした、これからも頑張ってください! (2022年5月11日 9時) (レス) @page10 id: d497566181 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - レノノアさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます!🥲💕 (2022年4月29日 18時) (レス) id: 4c9053914b (このIDを非表示/違反報告)
レノノア - 続きが楽しみです!これからも頑張ってください!更新を待ってます! (2022年4月29日 18時) (レス) @page1 id: bdc08c7998 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ | 作者ホームページ:なし
作成日時:2022年4月27日 21時