甘々な避難場所。３【短編集】

サメさん。【黄】 ページ16

｢____ひっ？！ だ、だれ……｣



帰宅し、疲れたのでベッドにダイブしようと寝室へ入ると、私のベッドには『何か』が寝ていた。

否、『何か』というのは抽象的すぎる気がする。それは人型で、グレーと白のふわふわ。顔も見えるが端正な顔立ちである。髪は金髪だろうか、チラッと見える前髪だけでもやけに似合っていた。


……目の前の『何か』を冷静に見つめている私にびっくりしつつ、近付いてみる。

寝ている限りこちらに危害を加える恐れはないだろう。寝ているフリ、という説もあるが、ヨダレまで垂れているので演技ではないのでは。

体をゆすってみると、



｢____んん〜、まってぇ……キスは、最高ですけど……ダメですって……｣

｢……寝言？｣

｢あっ、やだそこ……｣



一体どんな夢を見ているの、この人。

いや、サメ？ でも着ぐるみだし……と色々考えるが、起きてくれないことには始まらない。

とりあえず、起き次第警察を呼ぶ構えでスマホを持つ。


｢起きてください｣



よくもまあこんなにも冷静でいられるものだな、とネットニュースになった暁には外部から言われるかもしれないが、なんだかこの人には親しみやすさのようなものを感じる。

そういう類の、もっと深いもののような____、



｢んぁ、あれ……？ あ、おはようございます｣

｢や、なんでそんなに普通なんですか？ とりあえず警察に通報させていただきますので｣


思惟に耽ける途中、何食わぬ顔でまるで自分の家かのように起床した『何か』。寝起きでほわほわした顔もかっこいいが、怪しいものは怪しい。



｢待って！ 僕怪しくないから、サメだから｣

｢サメって言われたって、不法侵入なので不審者です。110……｣

｢うがぁぁああ！ お前を、食っちまうぞ〜！｣

｢わ？！｣



えっへん、と訳の分からない理論で胸を張っていたと思ったら 突如フードを脱いで『何か』の顔の全貌が晒された。

勢いよくベッドから降りてきて、距離が近い。何者かわからない者がこんなに近くにいるなんて、私も勢いに任せて警察に電話をかけた。

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