帰らせてくれ ページ37
ターゲットは30代女性。
クライアントである旦那さんからの依頼で現在不倫調査中。
早期解決を希望。結果はどうであれ報告してほしい、とのこと。
そんなわけでコンビニから帰ってきた弟者さんとターゲットを尾行していたわけだが。
『最初はブティックとかオシャレなカフェとか寄ってたから「あーもうクロじゃん帰ろ帰ろ」くらいにしか思ってなかったのに...』
弟「マジおついちあんの野郎ぉ何が「だぁいじょぶよぉ、尾行するだけだから!」だよ...帰ったらぶん殴ってやるわ...」
私も弟者さんも大分参っていた。
何が悲しくてこんなネオン街に足を踏み入れなければいけないのか。
いや、ちらほらまともそうな店もあるにはあるのだけど、男女で腕組んででかでかとえっちな謳い文句が書かれてるホテルに入ってくのってそういうことなんじゃないの。
『弟者さん...あの、私こういうところ来たことないんでよく分からないんですけど...何時間くらい待てばいいんでしょうか』
弟「うん...もしAが来たことあるって言ったら俺ちょっとびっくりしてたかもしんない...ていうか俺が知ってるって前提で聞かないでよ」
『え?来たことないんですか?』
弟「何その質問超やだ!!黙秘する!!」
『あー...なるほど...』
その反応...あるにせよないにせよ複雑だわ...。ちょっと不躾だったか。
弟者さんは私に一瞬目を向けるとすぐにホテルに目を戻した。
電柱の陰では防犯カメラや通行人にも見られてしまう可能性があるため、ホテルから死角になり、且つ人の来なさそうな裏路地の入口に張り込み場所を変える。
中に入るという案も出たには出たが、なんせ場所が場所なためさすがに却下した。
『おついちさんと兄者さんは今までもこうやって尾行してたんですかね?』
弟「うーんどうだろ?ここら辺そういうお店が多いみたいだし、男2人でうろつくのはあんまり得策じゃない気がするけどねぇ」
『緩くなってきてるとは言え日本はまだ外国より世間の目がありますからね...私たちみたいに男女でなら結構溶け込めてると思うんですけど』
弟「そうだねぇ...ん、誰か来たっ...」
『んっ...』
話している途中、弟者さんは何かに気付いたのか徐に後ろから左手で私の身体を抱き締め右手で口を塞いできた。
突然のことに頭がフリーズする。
弟「しっ...静かに...」
約30cmの身長差のために若干屈み気味な弟者さんが私の耳元で呟く。
私は前を見据えたまま頷くしかなかった。
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作者名:Alice:A | 作成日時:2019年7月24日 0時