夕日 ページ27
「 いやあ、沢山買ったね。 」
時刻はそろそろ夕方を過ぎる。
あれから色々な店に立ち寄り、生活する上で必要なものは揃えた。
荷台が重くなるにつれて彼女の財布は軽くなるのだけれど、何処か嬉しそうな表情を見せる子供達を見れば後悔の気など1ミリも湧いてこないのだ。
「 さて、私たちの家に帰ろう。家に帰ったら、君たちは順番に風呂に入ってくれ。2人ずつで入っても問題は無いだろうからね。私はその間に夕飯を作るよ。 」
馬に跨りつつ、彼女はそのように言った。子供達は各々返事をしたり頷いたりと反応を見せる。
「 昨日の手当で君たちに巻かれている包帯やガーゼは外して捨てて構わないよ。今日新しいものを買ったし、清潔な身体に付着させるものだから綺麗なものの方が良いだろうからね。 」
子供達にそう言いつつ、彼女は今晩のご飯は何にしようと考える。
彼らが食べやすいものが良いだろう。
とは言っても、彼女は薬学にこそ優れているものの料理に関しては経験が浅いため、作れるものも限られているのだけれど。
山に日が沈んで行く。
赤く染まった空は、まるで林檎のように綺麗な淡い色をしていた。
「 …… きれい 、 」
「 そう、やな。 」
子供達がそのように話している声が聞こえる。
彼女は少しだけ微笑んでから、わざとそれが聞こえなかったフリをした。
きっと、君たちは今後もっと綺麗なものを多く見ていくだろうけれどね。
彼女はそのように思いながら、ひたすらに馬を走らせるのだった。
_＿＿＿
時刻は少しだけ巻き戻る。
「 良いって言ったのに …… 、 」
薬屋の少女は、先程軍医の彼女から貰ったお金の入っている袋の中身を見てそのように呟く。
15円分で良い、と言ったにもかかわらず、袋にはどう見ても50円以上のお金が入っているのだ。
彼女のことだ。15円ジャストでの支払いだろうと思ってあの場で中身の確認は行わなかったのだが、まさかこんなにも多くのお金が入っているとは思わなかったのだ。
重さで気がつければよかったのだけれど、紙幣が多く入っていることから気がつけなかったのだ。
「 …… もう、あの人と来たら 。 」
彼女とはとある縁から長い付き合いなのだけれど、何時だって彼女は不器用で、お人好しでお節介なのだから。
彼女は愛おしそうに目を細めて袋を抱いた。
さて、次に彼女が来るのはいつだろうと考えながら。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 703人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
味噌(プロフ) - はるまきさん» コメントありがとうございます。前作から見ていただけているということでとても光栄に思っております。今後も更新を頑張って参ります故、是非御期待下さいませ。 (2022年1月12日 22時) (
レス) @page48 id: f15ce638ac (このIDを非表示/違反報告)
はるまき - 主様の前の作品のシリーズ面白くて何回も読み返してたんですけど、今回この話を読んで面白いなと思い作者を確認してみたら主様で驚きました。今後ともたのしみにしてます！ (2022年1月12日 0時) (レス) @page10 id: 3f953aa5db (このIDを非表示/違反報告)
味噌(プロフ) - シュネーさん» コメントありがとうございます。前編の方、御付き合いをありがとうございました。後編でも御期待に添えられるように頑張ります。今後も是非御期待下さいませ。 (2022年1月9日 0時) (レス) id: f15ce638ac (このIDを非表示/違反報告)
味噌(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます。面白い、と言って頂けると私としてもとても嬉しく思います。今後も頑張って参りますので是非御期待下さいませ。 (2022年1月9日 0時) (レス) id: f15ce638ac (このIDを非表示/違反報告)
シュネー - これで前編……だと……！？後編も楽しみに読みます！！待ってます！！ (2022年1月8日 19時) (レス) id: 32127d00d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：味噌 | 作成日時：2022年1月1日 13時
