薬屋 ページ25
街は賑わっていた。流石は表だけは治安が良い国である。
馬に乗っている彼女を見るのは珍しいのか、いつもの薬屋の少女もどこか驚いたように彼女を見ていた。
「 A様、本日は師匠も御一緒なのですね！ 」
「 そうなのだよ。今日は沢山買い物をする予定でね。
……あ、そうだ。昨日医務室へと戻ったら、包帯の在庫が少なかったのだけれど此処で買えたりはしないかい？普段なら他国からの貿易で仕入れているのだけど、今回は何故か減りが早くてね。 」
「 少しだけなら置いてありますけど … 、お幾つくらい欲しいですか？ 」
「 そうだねえ。取り敢えず20あれば良いかな。 」
「 20ですね！今確認してきます！ 」
薬屋の少女との会話を耳にしつつ、子供達はきょろきょろと荷台のカーテンの隙間から街を見渡す。
初めて見る服。
初めて嗅ぐ花の香り。
全てが彼らにとっては初体験だった。
「 お待たせしました。包帯20個、此方の袋に入ってます。 」
「 本当かい！ありがとう、助かったよ。包帯20個で幾らだい？ 」
「 いえいえ、大丈夫ですよ。お値段は15円になります。 」
「 おや、大分安いけれど……、 」
「 サービスです。これ以上のお金をA様からお取りすることは出来ません。 」
少女のことばに、Aは少し驚いたように目を見開いた後、
「 本当に、君には頭が上がらないね。有難う、 」
と言って微笑んだ。
そうして、薬屋の少女と別れた後に彼女たちは服屋へと向かうことになる。
「 さあて、皆。好きな服をひとり4着ずつ選ぶと良い。値段は気にせず好みで決めるのだよ。 」
「 … せんせい、わたしたちはおかねをもってないんやけど 、 」
おずおず、と声を上げたのはエーミールだ。
彼女はその言葉にきょとんとした後に、可笑しそうに笑った。
「 子供からお金を巻き上げようだなんて思っていないよ。勿論、君たちの服も食器も全部私が買うさ。君たちは気にせずに好きなものを選べば良い。 」
「 でも、 」
「 遠慮は無用さ。私は薬にしかお金を使わないからね。軍医の給料をナメないでくれ給え。 」
先程、金持ちではないと言っていたのは何処の何奴だと子供達は心の中で一斉に思っただろう。
正確に言えば、彼女は実際に特別金持ちな訳でもないのだが、こうでも言わないと彼らは遠慮をしてしまうと思ったのだ。
全く、彼女は本当に不器用なのである。
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味噌(プロフ) - はるまきさん» コメントありがとうございます。前作から見ていただけているということでとても光栄に思っております。今後も更新を頑張って参ります故、是非御期待下さいませ。 (2022年1月12日 22時) (
レス) @page48 id: f15ce638ac (このIDを非表示/違反報告)
はるまき - 主様の前の作品のシリーズ面白くて何回も読み返してたんですけど、今回この話を読んで面白いなと思い作者を確認してみたら主様で驚きました。今後ともたのしみにしてます！ (2022年1月12日 0時) (レス) @page10 id: 3f953aa5db (このIDを非表示/違反報告)
味噌(プロフ) - シュネーさん» コメントありがとうございます。前編の方、御付き合いをありがとうございました。後編でも御期待に添えられるように頑張ります。今後も是非御期待下さいませ。 (2022年1月9日 0時) (レス) id: f15ce638ac (このIDを非表示/違反報告)
味噌(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます。面白い、と言って頂けると私としてもとても嬉しく思います。今後も頑張って参りますので是非御期待下さいませ。 (2022年1月9日 0時) (レス) id: f15ce638ac (このIDを非表示/違反報告)
シュネー - これで前編……だと……！？後編も楽しみに読みます！！待ってます！！ (2022年1月8日 19時) (レス) id: 32127d00d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：味噌 | 作成日時：2022年1月1日 13時
