忠告 ページ2
薬屋の少女と別れ、城へと戻ろうとしていた時のことだった。
声がしたのだ。ひとりやふたりではない、大勢の。
「 … この匂い。 」
戦場で活躍する兵士たちを今まで診てきた彼女は、鼻をつくその香りに眉を顰めた。
「 やあ、そこの少年。この裏路地の先では何が行われているんだい？ 」
「 … ！ A様じゃあありませんか … ！ 」
たまたますれ違ったひとりの少年にそのように声を掛ければ、彼はその目を驚いたように見開いてから続ける。
「 …… それが、大変申し上げにくいのですが、この先では人の身が売買されているのです。 」
「 … なるほど。それはずっと前から行われているのかい？ 」
「 いいえ、つい最近増えてきたと言ったところでしょうか。場所は決まってこの裏路地でして …… 。 」
「 分かった。ありがとう。 」
微笑を浮かべ、彼に礼を言ってから彼女はその白衣をたなびかせつつ足を速める。
彼女の足は、裏路地へと向いていた。
「 A様！その裏路地は本当に治安がよろしくありません！小型のナイフなどを所持している者も少なくないのです！ 」
「 嗚呼、忠告ありがとう。でも大丈夫だよ。私も城に住むこの国の幹部のひとりだからね。 」
にっこり。
声を掛けた少年は、その顔に思わずひっ、と悲鳴をあげそうになる。彼女の顔は、それほどに恐ろしかった。
止めるものが居なくなったことを良い事に、彼女は裏路地へと歩みを進める。
奥へと進んで行く度に大きくなる声。鼻を劈く独特な香り。
そうして、ひらけた場所に出た時に彼女はその表情をずっと険しくするのだ。
「 … 予想通り、と言えばいいか、それ以上、と言えばいいか …… 。 」
彼女の小さな呟きは人々の大きな声に掻き消される。自分ですら聞き取れないような声だ。
へらり、と笑を零しつつ、彼女は人の群れの奥に見える鉄格子に目を向けた。
これは酷い。
彼女はそうおもう。
鉄格子の中には、鎖やら首輪やら口輪やら、とにかく動物にすら付けないような器具などが多く付けられている子供が十数名入っていた。
薄汚い布切れのような服に身を包んでいる彼らは、その瞳に光などは写していないようだった。
服から覗く四肢には夥しい数の傷__それも、人為的なものだ__が見受けられる。
はてさて。
軍医である彼女が、それを見ても尚
答えは簡単だ。
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味噌(プロフ) - はるまきさん» コメントありがとうございます。前作から見ていただけているということでとても光栄に思っております。今後も更新を頑張って参ります故、是非御期待下さいませ。 (2022年1月12日 22時) (
レス) @page48 id: f15ce638ac (このIDを非表示/違反報告)
はるまき - 主様の前の作品のシリーズ面白くて何回も読み返してたんですけど、今回この話を読んで面白いなと思い作者を確認してみたら主様で驚きました。今後ともたのしみにしてます！ (2022年1月12日 0時) (レス) @page10 id: 3f953aa5db (このIDを非表示/違反報告)
味噌(プロフ) - シュネーさん» コメントありがとうございます。前編の方、御付き合いをありがとうございました。後編でも御期待に添えられるように頑張ります。今後も是非御期待下さいませ。 (2022年1月9日 0時) (レス) id: f15ce638ac (このIDを非表示/違反報告)
味噌(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます。面白い、と言って頂けると私としてもとても嬉しく思います。今後も頑張って参りますので是非御期待下さいませ。 (2022年1月9日 0時) (レス) id: f15ce638ac (このIDを非表示/違反報告)
シュネー - これで前編……だと……！？後編も楽しみに読みます！！待ってます！！ (2022年1月8日 19時) (レス) id: 32127d00d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：味噌 | 作成日時：2022年1月1日 13時
