第8話。合掌じゃない ページ8
乙骨は泣きそうな気持ちだった。
突然刃物を向けられたのは驚いたし、怖かった。
それでも、もう誰も傷つけたくないと思って、ここに来たのに。
なのにまた、傷つけてしまうのだ。
ぎゅっと耳をふさぐ。
人の痛みを堪える声を聞きたくなかった。
しかしそんな声は一向に聞こえてこない。
恐る恐る目を開ける。
里香ちゃんが人を害するために伸ばした腕が、全く別の、しかし同じくらい大きい腕によって抑え込まれている。
【い゛ィイイや゛あアああああ゛!!!】
人間の腕のようにもみえるが、血色が悪く、爪が長いその相貌は、やはり呪いだ。
力押しで、怨霊がずず、ずずっ、と黒板へと押し込まれていく。
やがて怨霊は完全に姿を消した。
命令を遂行したその腕は即座に主の元へ帰った。
乙骨は腕を目で追い、そしてその少女を認識する。
何度かチラチラと視界には入っていたものの、目の前の三人、特に刃物を向けてきた人とパンダに気を取られ意識できなかったが、彼女はとても美しい人だった。
白く陶磁器のような肌なのに、頬と唇は見事な桜色だ。
長いであろうブロンドヘアはきっちりと編み込まれ、後頭部で纏められている。
そして、自分と同じ真っ白な制服だ。
太もも半ばまでのワンピース型で、スリットの入ったスカート部分は赤のリボンで縫い付けられている。
彼女はゆっくりと黒板の前まで歩き、何故か五条先生に合掌をした。
Aは五条に、黒板ばっこばっこにしてごめんなさい、という意味を持ったごめんねポーズをしたのだが・・・。
彼女の性格を知らない人にはそう捉えることもできるだろう。
五条は軽くOKマークを出す。
そして五条は軽快に乙骨と、彼に取り憑いた呪い――里香ちゃんとの思い出をテンション高く紹介しだした。
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紅 - ミスりました💦お返事ありがとうございます( . .)" (2023年4月15日 17時) (レス) @page50 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (2023年4月15日 17時) (レス) @page50 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
愛良(プロフ) - 紅さん» 嬉しいお言葉!!ありがとうございます!!頑張って書きますね!! (2023年4月13日 18時) (レス) id: 96b6d360b2 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (2023年4月13日 8時) (レス) @page18 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
愛良(プロフ) - みりかさん» 綺麗で読みやすいって…死ぬほど嬉しい言葉です…。でも普段は丁寧のての字もないです!嬉しいコメント、ありがとうございました! (2023年4月10日 18時) (レス) id: 96b6d360b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛良 | 作成日時:2023年4月4日 10時