叫号 ページ45
「…!?やっ、Aさん…っ!」
「…あなたの判断は許せませんが、今までのことは感謝します。
そらるさんを保護していただき、ありがとうございました。…では」
一息に言われた言葉には、もう二度とななくんと会わせる気はないという意味が暗に含まれていた。
では、という一言に、俺への非難も怒りも、負の全てを詰めたようだった。
悪魔はななくんの抵抗をものともせず、俺の横を通り過ぎて、玄関へ歩いていく。
「どこ、どこいくのっ!Aさ、Aさんっ!!」
「そらるさん、黙ってついてきてください。あなたの家は、ここじゃない」
「ちが、ちがう!!やだ!!」
ただならぬ雰囲気に何かがおかしいと気づいたのか、ななくんも繋がれた手を振りほどこうと目一杯抵抗する。
やっと動けるようになった俺は、でもどうしたらいいかわからなくて、二人を追いかけるように玄関まで出た。
もう悪魔は暴れるななくんに靴を履かせ終わったところだった。
今更だけどななくんは俺のTシャツを羽織っているだけで、あれで外に出たら寒いだろうな、なんて、的はずれなことを思った。
俺に気づいたななくんは、助けを求めるように白くて細い腕を伸ばす。
「Aさん!!お願い、ここにいていいって言って!!ぼく、ここがいい!!ねえ!!」
「帰りますよ、そらるさん」
「ぼくはそらるさんじゃない!!ぼくのいえはここだから!!」
いつまでも暴れるななくんに少しイライラしたのか、今までより一層強い力で腕を引き、玄関のドアを開けて、有無を言わせず外へ出る。
その、少し前。
「…ありがとうございました」
小さく聞こえた悪魔の感謝に、何かが込み上げてくる気がして、でもそれを声に出してはいけないと思って。
「……さよなら、ななくん。ありがとう。元気でね」
俺が小さく手を振ると、目一杯に目を見開いて、その綺麗な瞳からボロボロと真珠を零した。
踵を返した悪魔と泣き出したななくんが、ドアの向こうに消えた。
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漢女(プロフ) - すっごく面白いです!!!続きが気になるぅぅぅ!更新頑張ってください! (2021年10月6日 20時) (レス) @page46 id: 98465022b8 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 面白いです!更新頑張って下さい! (2019年3月12日 10時) (レス) id: 4b7909c7a1 (このIDを非表示/違反報告)
奏多(プロフ) - ミルクティーさん» ありがとうございます!出来る限り更新していきます! (2018年11月23日 9時) (レス) id: cf2adda2ab (このIDを非表示/違反報告)
ミルクティー(プロフ) - 最近更新が多くてとても嬉しいです!こういった話が大好きな私にとっては好きすぎる作品です() (2018年11月23日 0時) (レス) id: 8cebe82b4d (このIDを非表示/違反報告)
奏多(プロフ) - みつきさん» ありがとうございます!嬉しいです! (2018年11月18日 10時) (レス) id: cf2adda2ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏多 | 作成日時:2017年12月1日 16時