丹後で見つけし者 ページ12
(雑渡さんの回想)
それからというもの…貴方とお会いすることはなかった。いいや、できなかったのだ。
寺にいらっしゃるあいだは少なくとも、私が須磨寺へ近づけば…
貴方の存在が敵に感付かれる危険性があったから。
しかし、須磨寺が焼き討ちに遭ったと聞き…
私は貴方が生きているのではないか…そう望みを捨てきれず、幾度も福原を訪れた。
そして、一色家の領地、丹後へ…
雑渡「今日は…」
あの日はちょうど、一色家の姫…鹿江姫の命日。
復興を遂げた丹後の城下町では、慰霊祭が行われていた。
雑渡「はぁ…」
当時、私は戦の最中に大火傷を負ったことで、寝たきりの療養生活をしていた。
？？「昆奈門、調子はどうだ。」
雑渡「ああ、どうも高坂小頭…」
？？「ちょっといいかい？」
雑渡「ええ、今朝は熱もありませんので、構いませんよ。何かありましたか。」
？？「先ほど、雪子様から連絡があってな…その…実はな…」
雑渡「雪子様から？」
雪子様、と仰る女性。彼女は、黄昏甚兵衛殿の妹君であらせられる。
彼女はくノ一として、独自の密偵調査を行う凄腕忍者である。
高坂父「今日、丹後で鹿江姫の慰霊祭が行われている。」
雑渡「ええ、毎年恒例ですからね…」
高坂父「そこでな…城の跡地で……」
高坂父「亡くなられた一色義貫の奥方…巴江殿によく似た…女性を見つけたと…」
雑渡「何っ！？それは誠で…？」
高坂父「話によると、１５，６歳ほどの若い女だと…」
雑渡「…」
高坂父「その女は、城跡に呆然と立ちつくし、無言で空を仰いでいたと…」
雑渡「…」
高坂父「雪子様が…あのコは…昔お会いした鹿江姫に間違いないと…」
雑渡「…」
雪子様は、長きにわたり、一色家の生き残りを探していた。
彼女の、亡きご友人…巴江殿のご息女は必ず生きている、そう願って。
高坂父「雪子様がその後、女を調査したところ、どうやら彼女は忍術の腕がおありとのこと…」
雑渡「忍者…？」
高坂父「どうだろうか。千徳殿に会わせる機会を作るためにも、タソガレドキ城へ招くのは…」
雑渡「そう…雪子様が仰ったのですか。」
高坂父「ああ…ただ、彼女は忍術学園にも縁があるらしい。うまくいくかどうか…しかしまずは、ある程度彼女の安全を確保することが叶う。どうだろう昆奈門？」
雑渡「あとは殿と貴方にお任せします。」
高坂父「ああ…昆奈門の答えが聞けて良かった。」
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作者名：恋夏 | 作成日時：2023年3月13日 12時
