山城のとある伝説�� ページ10
(食満side)
村長は、話を続ける。
その黒い衣には、背に、とある文字が刻まれていた。
”滅”と。
その武士は、不思議な刀を所持していた。
刀身が黒色の刀を持っていたのだと云う。
その武士は、しばらくこの村に滞在していたが、
その間…
村長「ある夜、異臭がして、村人たちは目を覚ましました。」
新野「異臭？」
村長「ええ。」
異臭が漂う屋外へ出ると…
二本の角を持った、巨大な鬼が、暴れ回っていた。
その瞳には、「上弦壱」と、刻まれており、
村人が、その文字を目にするだけで、鳥肌が立つほど…
鬼の瞳は殺気を孕んでいた
村人は逃げまどい、成す術(すべ)が無かった。
そんなところへ…
村長「滞在中の、”赫灼の武士”が…現れたのです…」
武士は、怒った(いかった)
村長「人間の命を、何だと思っているのか、とね。」
食満「人間の命…」
その瞬間、
武士が持つ刀の刀身が、
炎を纏う赤色に変化した。
村長「その武士は、日の出まで、永遠と舞い続けたそうじゃ。」
食満「舞？」
村長「左様。刀を持ち、日の出まで戦い続けたのです。その姿はまるで、”舞を舞っているかの様だった”と伝わっておる。そして、日の出と共に、鬼は灰となり…そして消滅した…」
彼の戦う姿…舞う姿はまるで、
黒い龍のようだった。
村長「その話には、まだ続きがある。」
鬼がいなくなった後、武士は妻を娶った。
そして、子が生まれた。
しかし、武士の幸せは、そう長く続くことは無く、
妻と子を遺(のこ)し、若いうちに亡くなった。
村長「その後、妻と子がどうなったかは、伝承に残っておらんのじゃ。しかし、その武士は現人神であるに違いない。そう思い、村人たちはとある場所に神社を造り、その武士を祀ったのじゃ。」
新野「まさか…」
村長「そうじゃ。村外れにある、甘南備山にのぉ、”神南備(かんなび)神社”を建立したのじゃ。」
村長「そして、武士を”黒龍神(こくりゅうしん)”と称し、崇め祀ったのじゃ。」
食満「黒龍神…」
新野「なるほど…神南備神社が…伝承の名残だったのですね…」
村長「そうじゃ。」
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作者名：恋夏 | 作成日時：2023年6月10日 17時
