【刀剣乱舞】審神者が逃げる本丸

159.お役人様が来るってよ！ ページ23

.

　ふむ、と思案したのには正当な理由がある。
恐らくAは、三日月の刀を使い腕を斬った。つまり刀には彼女の血がついている。


　彼女の体質は特殊なものだ。
その髪の先から爪先、魂、血の一滴すら全てが神にとっては尊いもの。

　そこに経緯は関係ない。この刀は……否、三日月は、彼女の血がついたことによって、彼女との縁が強化されてしまったのである。

　だが、それをA本人が望む筈がない。寧ろ逆だ。「マジありえないふざけんな！！」と泣き喚くところだ。


「……三日月さんには悪いけど、この人とこれ以上縁を深めて貰うわけにはいかないんだ。ごめんね」


　そう言って、小夜は霊力を込めて刀からその血を拭き取ると同時に、Aと三日月との縁の強化を“なかったこと”にした。


「……主が、本当にここの主になってくれるのなら、こんなことはしなくてもいいのにな」


　わかっている。わかっている。
それは過ぎた願いだ。これ以上ここにいて、刀剣達に執着されてはいけない。彼女は早くここを去るべきなのだ。


　小夜は眉を下げて小さく笑った。
そうして、ぐったりと死んだように眠るAを抱きかかえて、三日月の部屋を去ったのだった。


────
──


　「あーたーらしーいあーさがっきった
きーぼーうのあーさ────だと思ったか！逆だわ！！絶望の朝だよド畜生が！！！！何かこれ前にも言った気がする！デジャヴ怖い！！」


　さて、おはようございますAです。
気づけば朝でしたびっくり。え？寝る前に私に起こった出来事？一言で言うなら災厄、ですな！

　とにかく、今の現状はこうだ。

1.刀剣男士は恐らく審神者の神隠しを賭けて遊んでいる
2.三日月には(謎に)かなり執着されている
3.カミサマにここの位置が割れた

　スリーアウト、ゲームセットレベルに危機的状況にあるだけではない。


「審神者様！政府からの通達を読み上げます！」

「どうせクソ長いんでしょ？三行で要約して」

「かしこまりました。
・本日の昼前に
・担当官と役人を送る
・準備して出迎えろ、以上でございます！」


　本日、政府のお役人様方がご来訪するという突然の事実。送るなら担当官だけでいいだろ普通。
　こんのすけに問い正したら、何やら調査の結果報告的なものをするらしい。


「……調査？」
「申し訳ありません審神者様！これ以上はご容赦を！！」


　結局詳しく聞けずじまいだった。

160.絶好の機会→←158.最適解を求めよ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す