【募集企画本編】黄昏時、なる頃に (ページ2)

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(酷いこと、言っちゃったな。)

ある言葉が頭から離れず気分が悪くてせっかくの記念デートだというのに冷たい態度を取ってしまった。

──そういうところ彼氏クンから嫌われてるんじゃない？

「〜っつ！」

昨日の仕事帰りに見知らぬ少年からいきなり話しかけられた出来事やあの言葉が再びフラッシュバックする。嫌な気持ちがぶり返してきたため気を紛らわすように頭を振る。

「駄目よ、もう忘れなきゃ。今はデートのことに集中しないと」

「酷いなぁ、忘れてしまいたいだなんて」

後ろから声がして振り向くと昨日の少年がニコニコと笑みを浮かべながら立っていた。

「昨日教えてあげたこともう忘れたの？馬鹿だなぁ。彼はこの間レストランで同僚の女の子に愚痴ってたよ。君のことが面倒くさい、さっさと別れて同僚の子と付き合いたいって。」

「そんなデタラメ…やめてください」

「人が親切に教えてあげてるのに酷い娘だなぁ〜。あ！それでね記念デートの時に思いっきり振ってしまおうかなって笑いながら話してた！証拠だってあるんだよ」

スマホで録画した映像を見せつけられた。
どうして撮っていたのかはさておき映っている姿、仕草や声までも私の知っている彼そのものだった。

(違う違う！優しい彼が浮気なんか、そんな酷いこと言うはずない！！)

「あは動揺してる。もう諦めなよだって──」

聞き流そうとしても少年の話す言葉一つ一つ頭に響いて離れない。心臓の鼓動が早くなり苦しい、足もふらつき目眩も耳鳴りも止まらない、辛い苦しい。

「ほらほら、苦しいでしょ？楽になりたいならこの刀受け取ってよ」

(もうどうだっていいか、楽になれるならそれでいい。)

私は差し出された刀に手を伸ばす。一瞬触れたらいけないという意識が過ぎるも身体がいうことを聞かず刀を掴んでしまった。すると突然身体に雷に撃たれたかのような衝撃が走る。

「うっ！ああああああああぁぁぁ！！！！」

悲鳴を上げると同時に彼女の身体に黒いモヤが纒わり付く。そのモヤを取り込んだ後死人のように青白く生気のない顔へと変化した。

「アハハっ！成功だね！君はボクを楽しませてくれるのかなぁ？」

──あんな偽物の映像にいとも簡単に騙されるなんて本当に人間って馬鹿ばっかりだなぁ。

意識を乗っ取られ虚ろな表情しながら愛する彼のもとに向かっていく彼女の後ろ姿を楽しそうに見つめる少年の姿があった。