【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ8)

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坂田銀時【中村】ページ8

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「――待った？」

とある四月、とある居酒屋。充満する酒と煙草の匂いのど真ん中でそんな声を発したのは私だった。投げた先は、既に飲み始めていたらしい銀髪であり、

「そうでもねーよ」

この間ぶり、とひらり銀髪――銀時が、左手を緩く振った。その懐かしい姿に少し笑い、私もそいつの正面へ腰を下ろす。

「お前何飲むの」「日本酒」「オヤジかよ」座卓の上をとぶのは他愛ない会話だけれど、銀時と面と向かって話すというこの状況がなんだか妙に気恥ずかしかった。誤魔化すように画鋲で止められたメニュー表へと視線を逃がせば、ヤニで黄ばんだ短冊型が風景として流れ込む。

坂田銀時という男は、高校の同級生だった。昔からどこか掴みどころのなかったそいつと隣の席になったのは、確か高校一年生の初夏のこと。そこから、なんやかんやで仲良くなって、なんやかんやで浮ついた仲となって、そしてなんやかんやで恋を散らせて――。

銀時と私とは、そんな、遠く褪せた思い出の、隅の隅に置いておくくらいの仲だった。それこそもう会うことなどないだろうと思っていたくらいの、そんななんてことない仲だった。……はず、なのだけれど。

でも、どうやら人生というものはフシギなものであるらしい。

きっかけは、先月行われた同窓会。今まで参加していなかったそれに気まぐれで参加してみたところ、銀時と再会したのだ。
言葉を交わすのもまして顔を合わせるのだって高校時代ぶりだというのに、意外にも話は盛り上がり、ならば今度は酒でもなんて流れになり――まぁ、そんな訳で今に至る。

「――お前いま何してんだっけ？」

生ビール、焼き鳥、日本酒、唐揚げ。
銀時がその問いを投げたのは、座卓の上にダメな大人ラインナップが勢ぞろいした頃だった。「何ってねえ」唐揚げをひとつ飲み込んで、そいつに視線を合わせてみる。

「ふっつーに働いてる。OLってやつ」

「意外と普通にやってんだな。高校のときお前は将来漁師かギャンブラーになるもんだと思ってたけど」

「アンタ人を何だと思ってるわけ」

どこまでも気力なく失礼を吐き出すその男。どうして連想される職業がその二択なのか訳がわからない。二択の特殊性も訳がわからない。そもそもそれはこちらの台詞であるし。

「銀時こそ定職に就きそうにない顔してるのに今じゃ立派なサラリーマンでしょ」

仕返しに言ってやれば「定職に就きそうにない顔ってナニ」狙い通りそいつは頬をヒクリとさせたようだった。