【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ21)

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次の日、高杉は教室に顔を見せなかった。
しかし彼女もどんな顔で会えば良いか分からなかったため、これで良かったのかもしれないと胸を撫で下ろす。
もう彼が隣の席には戻ってこなくても、仕方のないことだと諦めるしかないみたいだ。机の横に下げていた二つの袋は、授業中は空調の風によって小さく退屈そうに揺れていた。

放課後、彼女は担任に進路について話があると言われて呼び出され、それが終わった頃には空は焼けるような茜色に染まっている。高杉はよく空を見ているようだったが、今もこの焦がれてしまう空を、見上げているのかもしれない。

置き去りにしていた鞄や紙袋を取りに戻るために、恐らく誰もいないであろう教室の扉を開けたが、彼女の席の隣には、彼女が今一番会いたくなくて、一番会いたかった人が机にうつ伏せになって眠っていた。

起こさないように上履きを滑らせながら近づいて耳をすませば、気持ち良さそうに立てる小さな寝息が聞こえる。長い睫毛は目元に影を作り、余計に彼の秀麗な顔つきを引き立てていた。

思わず伸ばしかけた指先は、彼に触れることなく拳に変えて握りしめる。そんな時、低くも柔らかい、晴れた冬の朝に降り注ぐ陽光のような声が耳に届いた。

『……起きても良いか？』

ぱちっと開いた切れ長の三白眼。驚いた彼女は勢い良く後退るも、自分の机に背中をぶつけてバランスを崩し、尻餅をついてしまう。

『起きてたの！？』

彼は片方の眉を下げて呆れたように彼女を見下ろして、彼女に向かって細く長い指先の生える手を伸ばす。しかしその手を握る前に、下校時間を告げるチャイムが教室に響いては、手を握らずに自分で立ち上がり、スカートに付いた埃を手の甲で取り払った。

そんな彼女を、彼は穴が空くほどジッと見つめている。奥を見ようとする、彼の翡翠の瞳から自然を装って彼女が顔を逸らせば、聞き違えてしまいそうなくらい蚊の鳴くような声でボソリと呟いた。

『お前が昨日、あんなこと言うから……』

そう言うや直ぐに口を噤んでは、彼女の横を通り過ぎて教室を出て行ってしまう。一人取り残された教室はやけに広くて、窓から射し込む夕陽が、彼女の足元の影を長く伸ばした。

それはまるで、ここから彼に繋がっているような気がして。彼女は影の伸びる方へ向かって走り出す。

高杉は昇降口を出て直ぐのところにいた。
歩いている後ろ姿は手を伸ばしても届きそうになく、彼女は彼を引き止めるために声を張り上げる。

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