―133 子供のような男 ページ33
ひと通り話し終えたAは、重々しい空気から逃げるように、「少し休ませてもらうよ」と席を立ち、制止するリボーンの声も聞こえないふりをして談話室を出た。
あんな話をしたのだから追いかけてくる者などいないと思ったのに
後ろから聞こえた駆け寄ってくる足音に、一番面倒なやつは、そういえば空気を読むなんて言葉とは無縁のやつだったと
Aは歩調を緩めることなく、振り返りもせずに声をかけた。
「休む、と言わなかったかな。草壁」
「申し訳ありません、雲雀がどうしても貴女と話がしたいと」
「そうだろうね。でも私は嫌だ。面倒くさい」
聞こえているんだろう、私は行かないから
だからって部下にあたり散らしたりはするなよ
草壁の襟元についているピンマイクに顔だけ向けてAは続ける。
「さっきの場に、子供みたいな我儘で来なかったくせして
自分だけ用があるからと人を呼びつけられると思うなよ」
「そんなこと、君に言われたくはないな」
聞きなれた低い声
ちょうど角を曲がり切った先、雲雀はそこに立っていた。
4ヶ月前、ボンゴレを出る時に顔を見ていなかったから、真正面に対峙するのは久々のことで
しかし、元より表情の見えない男だ。
変わらず、不愛想な顔でAを見下ろしていた。
「邪魔なんだけど」
「哲、君は戻っていて」
Aの意見を聞くことさえもしない
予想外の上司の登場に驚いたようだったが、神出鬼没なのはいつものこと
草壁は小さく返事をして即座に席を外す
この男とふたりきりは、極力避けたかったんだけどな
遠くなる草壁の背中を少し惜しんで、Aは改めて雲雀に向き直った。
雲雀がどかねば自室に行くことができないが、人払いをしたあたり、このまま素直にどいてくれるわけがない
いつも自分のことばかり
中身はそこらの子供と変わらないな
そう口にしそうになるのをこらえて、胸の中で毒づき
観念したAはため息をついて、廊下の壁に背をもたれた。
しかし、雲雀は一向に話す気配がない
立ちふさがって足を止めさせたくせになんだというのだ。
「話がないなら失礼するよ」
しびれを切らしたAが、雲雀を押しのけて横をすり抜けようとしたとき、雲雀がAの目の前に腕を伸ばし、壁に手をつくようにして彼女の進行を妨げた。
「なにを」
するんだ、と
2度も妨害にあったAが、さすがに抗議しようと雲雀に顔を向けると、雲雀は触れるか触れないか
Aの顔に、壁に腕をついたまま、反対の手を添えさせた。
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po_poncham(プロフ) - 一夜さん» 長らく更新していてすみません、あたたかいお言葉ありがとうございます。ふたりとも幸せにするために頑張りますので、今後もよろしくお願いします。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
po_poncham(プロフ) - 杏音さん» 長らく更新できずにすみません、シルヴァくんまた出てくるのでお楽しみにしていてくださいませ。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
一夜(プロフ) - 初めまして。ぽんかん様のこの小説がとても大好きで何度も繰り返し読ませて頂いております。トガセちゃんもシルヴァくんもとても大好きです。お忙しいとは思いますが、いつかまた更新されることを願っております。素敵な作品に出会えて幸せです。ありがとうございます! (2020年12月26日 4時) (レス) id: a1724270ec (このIDを非表示/違反報告)
杏音(プロフ) - はじめまして。どちゃくそに好きです私..!シルヴァくんすごく好きです!!続き楽しみにしてますね! (2020年3月14日 4時) (レス) id: 966729f8ef (このIDを非表示/違反報告)
たまご - いえいえ!ぽんかんさんのペースで大丈夫です!気長にお待ちしてます!あとTwitterフォローしてます!とってもファンです!!! (2020年1月31日 20時) (レス) id: cfd662b50b (このIDを非表示/違反報告)
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