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"綺麗ですね"




"ホントだ。綺麗だな"





空になったたこ焼きの容器をベンチの上に。

ぼんやり空を眺めていれば、真っ黒のキャンパスに赤、青、ピンク、黄色。と不規則に多色の花が描かれてゆく。
松田さんは気づいているかな、なんて思い隣を覗き見すれば、花火から零れた光彩が彼の体に降り注いでいて。
やや褐色肌である彼の顔が鮮やかな色に照らされていた。





"花火って音するんですかね"




"あぁ、うるせーくらいにな"





そう私に残して、松田さんはまた空を見上げて青い瞳に花火を閉じこめる。私も彼から花火に視線を戻して、どんな音なんだろうとぼんやり考えながら眺める。



よく漫画や本などで、花火を打ち上げる時の擬音が文字となって私に教えてくれることがある。しかしそれらが一体どんな音なのか全く想像つかない。そのため全く意味が無い。


例えば、ピュ〜って音。その後のババン!って音。そしてその後のパラパラパラ…って音。ピュ〜って音が鳴るのはわかるが、それは低い音なのか。はたまた高い音なのか。毎回そこで悩んでしまう。ババン!という音の音程も分からない。バ↑バ↓ンなのか、バ↑バ↑ンなのか。全く想像できずに諦めてしまう。パラパラパラパラ…という音も、先程述べたとおり全く分からない。


静寂の中行われる花火。耳が聞こえていれば、もっと賑やかなのだろうか。沢山の人の歓声が鼓膜の近くで踊って、わざわざ空を見なくても音だけで花火が上がることに気付けて、花火を見ながら松田さんと会話することが出来て。



あぁ、私だけ、なんでこんななんだろう。皆同じように私を創ってくれればよかったのに。神様はなぜこんな面白くもないイタズラを。



花火は先程よりも多く大きく咲いて枯れる姿を見せることなく散ってゆく。これで最後だったのだろうか。次の花火は中々打ち上げられない。1度も花火が無くなるところを見せてくれなかったので、いつの間にか終わることがないと錯覚していた。






"凄かったな、花火"




"そうですね、すごく綺麗でした"






陳腐な感想を述べて、置きっぱなしにしていたたこ焼きの容器を持ち、松田さんと同じタイミングでベンチから下りる。



持つ。なんて差し出された手にこれぐらい持てますよと断りを入れて、共にゴミ箱を探しに歩く。楽しそうに神社を出ていく恋人や家族、友達と思われる人達を眺めながら離れないよう松田さんの服の裾をバレない程度に掴んだ。

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もなか飴(プロフ) - こんなん泣いてしまうて…、 (2022年9月7日 14時) (レス) @page28 id: c284cc2b6c (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - memoryさん» お気持ちだけもらっておきますね!!(^-^) (2022年7月18日 12時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - memoryさん» いえ、こちらこそ無理なお願いをしてしまいすみません!!それに、全く自分勝手ではないです!!こちらの方が自分勝手で…本当にすみません!!あと、残念なんですが私Twitterをやっていなくてですね💦でも書いてくださろうとしてくれたお気持ちは凄く嬉しいです!! (2022年7月18日 12時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
memory(プロフ) - まみこさん» とても素敵なリクエストありがとうございます✨大変書きたい衝動に駆られていますが…あとがきを書いた後にお話を作るのがあまり好きではないので…自分勝手で申し訳ないです。もしTwitterをまみこさんがやっていましたら、そちらの方で投稿させて頂きますね! (2022年7月18日 7時) (レス) @page27 id: 11927a2f45 (このIDを非表示/違反報告)
memory(プロフ) - まみこさん» コメントありがとうございます💓涙を流していただけるほどの作品にすることが出来て良かったです…!最後までご愛読ありがとうございました😊✨ (2022年7月18日 7時) (レス) id: 11927a2f45 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:memory | 作成日時:2022年6月4日 22時

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