第104話「一心不乱」 ページ6
大穴の空いた壁から、まるで滑り台を見立てたかのように下へと伸びる、分厚い氷。
その行きつく先では、轟が今にも膝から崩れそうな程にまで疲弊していた。
そうオールマイトが疑問符を浮かべると同時に、別カメラへと華麗に映り込んでくるA。
其処は元々彼らIチームが待機していた、核のある部屋だ。
そしてAはあろうことか、地に手を這わせ、長く伸びた足を地面から離しては器用に振り翳し、残っていた尾白と葉隠の封じられた身を解放する。
その後、マイク越しに聞こえてくる美声は、抑揚がなければ息切れすらしていない。
オールマイトは寒さからくるものなのか分からず仕舞いに、背筋を震わせた。
しかしそこで、思い出したかのようにハッとする。
「
それ以上の加減を学ばないようやら、即、強制終了させ、君らの負けとするぞ！」
オールマイトは自分の掌と随分と差のつくマイクを握り締め、焦燥感に駆られるようにそう語りかけた。
然し乍ら、虚しくも颯爽と轟の下へと降り立ったAには、まるで聞こえていないようである。理由は異なるが、それは轟も同様。
オールマイトは今や彼らの意識外に在った。
互いが互いのことしか頭にない。
……いや、Aだけは轟のみに集中している訳ではないようだが。
しかしそうこうしているうちに2人の戦闘は再開され、オールマイトは手に負えないとでも言いたげに、観戦に専念し始める。
そこでオールマイトは、クリップボード片手に気づいた。
───明らかに先程までにはあった轟少年の余裕が欠如している…。
良くも悪くも制限時間を意識しているのか。
轟少年の中で芽生えた焦慮が波動となっているようだ。一心不乱な動きには隙も無駄も多い。
それに
本当は君も分かっているんだろう……？
「なんか避けてばっかりだねー。」
芦戸三奈が早くも興ざめしたように呟く中、思案し続けるオールマイトの身体は、僅かながらに緊張する。
まさかこのまま終了時間まで持ち堪えるつもりか…？
すると直後、事態は急変する。
「っ……なッ…！？」
突然、轟が後ろ手に引っ張られ────…
「捕獲！！」
どこからともなく、そんな健気な声が聞こえた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 783人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Acer(プロフ) - ゆゆゆのゆさん» せっかくコメントして下さったのに気づくのが遅くなってしまいごめんなさい…！！心優しいお言葉をどうもありがとうございます。この作品を見て頂けた事も含めてとても嬉しいです！ (2022年9月1日 0時) (
レス) id: a9c8d45116 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆのゆ - あああああまじか、神作見つけてしまった、、、東京喰種とヒロアカのクロスオーバーとか好みでしかないまじで、、、更新ありがとうございます、これからもお体に気をつけて無理しない程度に更新頑張ってください！応援してます！ (2022年2月15日 1時) (レス) @page49 id: 8a59a918f4 (このIDを非表示/違反報告)
Acer(プロフ) - トアさん» 長い間更新停止してしまいすみませんでした。また読みに来てくださったことと、この作品を好きだと伝えて下さったこと、とても嬉しいです！励みになります！！コメントありがとうございました、これからも頑張ります！ (2022年1月29日 19時) (レス) id: a9c8d45116 (このIDを非表示/違反報告)
トア(プロフ) - わ、更新されてる…！ありがとうございますめちゃくちゃ楽しみにしてました。ほんと好きな作品なのでまた続きが読めるなんてとても嬉しいです。他作品も読ませていただきます。応援してます！ (2022年1月27日 17時) (レス) @page30 id: 8b0257a1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Acer(プロフ) - 紗蘭さん» コメントありがとうございます！前々から見ていて下さったようでとても嬉しいです！この作品を好きだと言ってくださる方がいると認識できただけでも今後の励みになります。応援ありがとうございました！！ (2022年1月23日 22時) (レス) id: a9c8d45116 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Acer | 作成日時：2019年4月12日 23時
