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……。おかしい。イオンは閉じていた虹彩を開く。空腹に耐えるためひたすら眠っていたが、限界だ。
外の魔力がずっと消えない。それはつまり兄弟親類がまだ近くにいる事を指し示している。自分よりも強い彼らがいる間だけ隠れてやり過ごそうとしていたが、そろそろ何か食べないとまずい。このままでは動けなくなる。そうなれば後にあるのは死だけだ。
イオンは悩んだが、外へ出る事にした。海藻と海藻の隙間を這うようにして泳ぎながら、ゆっくりと暗闇を目指す。彼らは石柱の管理のために近くにいるはずだ。ならば石柱の存在しない場所へ身を隠すのが良いだろう。ある程度上昇して、そこで餌を探せば良い。石柱近辺で餌を探すのも考えたが、彼らが近くにいるかもしれない事を思うとそんな事はとてもできなかった。
ぐんぐんと上昇していく。壁面の魚の群れを襲って食べようかと考えていたのに、この時に限って見当たらない。他の魚達も王族の魔力を感知して、隠れたか、あるいは逃げ出したのだろう。更に浅い場所へ……イオンは一旦壁面に空いた洞穴へ身を隠した。中には何もいない。
彼女は考える。どうしようか。この付近に隠れているであろう獲物を探すか。それとも、更に上昇して獲物を探すか。前者であれば移動にそう体力を使わないだろうが、この一帯に獲物がいるのか分からない。経験則からして、こういう時には多くの魚は上へ移動していた。後者であれば……移動にかなり体力を使うだろうが、餌にありつける可能性は高い。
決定は早かった。この判断の早さこそが脆弱なイオンをここまで生かしてきた。イオンは洞穴から出て、壁面に沿って上昇していく。途中で見かけた小さな蟹や貝を手当り次第に貪るが、イオンの空腹を癒やすには到底足りない。
水圧の変化で全身が痛む。焦るイオンは目を凝らして獲物を探すが、それらしきものは見当たらない。段々と意識が遠のく。このままでは……そうイオンは危機感を持つが、遅かった。彼女は致命的な間違いをしていた。窖の傍で、多少のリスクがあってでも光に集まる魚を狩るべきだったのだ。しかしそれを後悔する暇もなく、イオンは全身の力が抜けていくのを感じる。
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