くまさんとはちみつ

＊ ページ43

Side：BLACK



慎太郎の家に来たは良いものの、慣れない空間に少しビビっている。急なタイミングでの訪問に、全然心の準備ができていなかった。




勝手に家を漁るのは申し訳ないと思いつつ、看病に必要なものを探す。


目に入ったのは、ローテーブルの上に乱雑に置かれた薬たち。


「あいつ、ずっと風邪引いてたんじゃねえの」


呆れてため息をついていると、ワンワンと吠える声が聞こえた。

振り向けば、画像でしか見たことなかった慎太郎の愛犬がそこに。



知らない人の来訪に、めちゃくちゃ怒っている。


ご主人様が顔をださないのに俺がいるのは、おかしいか。


「シェリー、ちゃん？……こんにちは」


犬の扱いには慣れているから、そっと頭を撫でれば鋭い歯をしまってくれた。


「慎太郎、あっちにいるから見にいこっか」

薬と冷えピタを手に持ち、俺のサインに全速力で寝室へ走るシェリーを追いかける。




「…入るよ」

よっぽど辛かったのか、ぐっすり寝ている慎太郎。
シェリーが尻尾を振ってキャンキャン鳴いても、全く反応しない。


冷えピタを額に貼り、ベッドの横に座り込む。



汗ばんだ髪を撫でていると、段々落ちてくる自分の瞼。

「……はっ」

シェリーに服の裾を噛まれて我に帰る。



「ごめん、ソファ借りるね。おやすみ」

すーすーと寝息を立てる慎太郎に声をかけ、再びリビングに戻る。




初めてきた空間なのに自然と眠気が襲ってくるのは、長年共にした慎太郎の匂いのせいなのか。



明日は軽いご飯を作ってあげようと思いながら、俺は目を閉じた。

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