Abissale solitudine－海の底に消えた鍵－ Ⅳ (ページ10)

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標的126【回想:重い沈黙】ページ10

「分かったよ、ただし、ちゃんとちゃんと2ヶ月後には登校してきなよ。
　君が居ないと、書類が片付かないからね。
　――じゃあね」

　会話が終わったらしく、雲雀はスマホを耳から離すと、「――と言う訳で」と生徒たちを睨みつけた。
　先ほどと打って変わって冷たい声と目。
　リオンから電話が来た時と大違いだった。

「リオンは今日から2ヶ月、学校に来ないよ。
　その間だけでもリオンへの嫌がらせを辞めてみると良い。
　もし明日、あの女子がリオンに何かされたのだと言い張ったら――その時は流石に分かるだろ」

　ギロリ、と睨んでくる雲雀の目は、静かな怒りに燃えていた。
　“本当はこの場で教室にいる奴ら全員咬み殺したい”――そんな言葉が聞こえてきそうなほど、雲雀が怒っている事を察した。
　その雲雀の想いが、口から漏れ出る。

「今度、リオンに何かしたら、あの女子も君たちも許さない。
　全員、咬み殺す」

　その言葉は重く、生徒たちに緊張を与えた。
　教室の空気に構うことなく、雲雀は「ふん」と鼻を鳴らし、学ランを翻して教室を出て行った。
　その後に重い沈黙が教室を包み込む。

「……とりあえず、君たちがリオンを信じられないというのなら仕方ないねぇ」

　沈黙を破ったのは、セラだった。

「あの委員長クンの言う通り、明日分かるだろうさ。
　だってこの場には、保坂理絵奈は居ないからねぇ。
　保坂理絵奈はリオンが2ヶ月も登校しないのを知らない。
　それで、リオンから何かされたとほざいたらその時は――」

　セラがクラス一同を睨む。
　セラの言葉の続きは、言われなくても想像できた。

「今までのすべては保坂理絵奈の狂言だった……って事さ」