Abissale solitudine－海の底に消えた鍵－ Ⅳ (ページ7)

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標的123【回想:説得】ページ7

「リオンが女の子なのは本当だよ。
　従姉妹である俺が言ってるんだから、それは信じてもらわないとねぇ。
　……で、リオンが女の子だと解りました。
　さて……君たちは一体、何故(なにゆえ)リオンを傷付ける？
　そもそも、リオンへの暴行の切っ掛けは何だい？」

　底なしのような深い海の目がクラスメイト達を射抜く。
　その目は、何かを見透かしているかのような透明感さえ感じさせた。
　セラに睨まれて、誰も声を発せないようだ。

　暫くして、1人の女子が手を上げた。

「誰も言わないから……私が言うね」

　声を上げたのは、京子。
　彼女はしっかりとセラの目を見返した。

「去年、保坂理絵奈が屋上でリオンちゃんに告白されて、断ったら襲われかけたって言ったの。
　初めはリオンちゃんも否定してたんだけど、保坂理絵奈がちょっと涙目になったら皆、リオンちゃんに暴言吐き始めたよね」

　京子の話により、空気が重くなる。
　お通夜状態の中、誰もがバツが悪そうに眼を逸らした。

「その後は皆、保坂絵里奈の言葉だけを信じて――」
「……えだって」

　続く京子の言葉を遮って、一つの呟きが落ちた。

「お前だって、今神谷の味方面してるけど、今まで見てみない振りしてたじゃないか！」

　呟きは、爆発したかのような怒鳴り声へと変わり、京子を糾弾する。
　そして、京子へ猜疑的な目が向けられた。
　そんな視線も気にせず、京子は開き直ったかのような態度で自分の周りを見回す。

「確かにそうかもね。
　だって、確証がなかったんだもん。
　だから、リオンちゃんの事、ずっと見てた。
　リオンちゃんがどんな人で、何を考えて教室にいるのかをね。
　何を言っても傍観してた事には変わりないよ。
　でも最近、私はリオンちゃんと和解したし……100％リオンちゃんの味方になるって約束したの」

「それで他に何か文句ある？」と問いかける京子の顔には薄い笑みが浮かんでいた。

「リオンちゃんの味方になると和解して、それを行動に移す努力をした私と、ただただ保坂絵里奈の妄言を盲目的に信じてリオンちゃんに暴力を振るっていた貴方たち、何が違うかな？
　貴方たちに私を糾弾する権利がある？」

　そこまで言われて、ぐうの音も出ない。京子の言った事は確かに正論なのだ。
　誰も何も言えないのは当然だった。