Abissale solitudine－海の底に消えた鍵－ Ⅳ (ページ6)

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標的122【回想:リオンが拉致られた後】ページ6

――これは、3ヵ月前。
　リオンがヴァリアーに拉致られた後にまで話が遡る。
　あの後、沢田・獄寺・山本は、クラスメイトを連れて教室に戻っていた。
　そこには、セラの姿もある。

「さっきの話だけど。
　“神谷璃王”は実は女の子なんだ。
　リオン・V・ヴァルフォア……それが、神谷の本名らしい」

　教壇に立って説明する沢田。しかし、クラスメイト達は沢田の言葉を上手く呑み込めないようだ。
　困惑した表情を沢田へと向けている。

「らしいって……そんなの、彼奴の妄言かもしれないだろ！」

　クラスメイトの一人が言った。
　彼の言う事は尤もで、沢田たちは獄寺がリオンの存在を知っており、尚且つセラから激しく叱責されたが為にリオンの話を信じる事ができた。
　しかし。彼らにはリオンの話を信じる術はない。
　それ故に彼が“妄言じゃないのか”と疑うのも無理はなかった。

「妄言じゃない事はさっき校庭にいたフードの人の言葉で分かっただろ？
　初対面っぽいリオンを確認した後、そのまま連れて行った……これ以上の説得力がある？」
「それは……」

　沢田の言葉に、クラスに静寂が訪れる。
　が、それは束の間だった。次の瞬間にはまた、反論が飛び交った。

「たとえ彼奴が女でも、理絵奈ちゃんを殺そうとした事実は変わらねーだろ！」
「そうだそうだ！今までの暴行だって、彼奴が理絵奈ちゃんに――」
「黙れ、バカ野郎ども！！」

　口々に叫ばれるクラスメイトからの保坂擁護の声に耐えかねたセラが叫ぶ。
　沢田以外の声が叫んだことで、教室の中がしん、と静まり返った。

「理絵奈理絵奈五月蠅いねぇ。
　その理絵奈とやらが自作自演してる可能性は全く考えないのかい？
　事実とか言うけど、君らは実際にリオンがその痛い子を虐めてる場面を目撃したと？」

　ギロリ、とリオンと瓜二つの藍色の目がクラス中を見渡す。
　今にでも襲い掛かってきそうなほどの殺気を受けて、クラスメイト達はひっ！と喉を引き攣らせた。

「リオンは優しいから、君たちには手出ししなかったようだけどねぇ。
　あまりふざけた事をほざくなら、容赦しない」
「ツ……ツナ、さっきから何だよ、その女子は？」

　セラの言葉に怯えながらも、男子の一人が沢田に問う。

「リオンの従姉妹だって」
「従姉妹ぉ！？」

　沢田の言葉に驚愕する男子。
　クラス中の視線がセラへと集まった。