Abissale solitudine－海の底に消えた鍵－ Ⅳ (ページ37)

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番外編1‐2【命よりも大事だけど】ページ37

「……？
　大切な人なら、お父さまとお母さまだよ？」

　何とも子供らしいことを言いながら首を傾げるリオン。
　我が娘ながら、可愛すぎんか？
　娘から“大切”だと言われたリオンとそっくりの男は、ごふっ！と飲んでいた紅茶を吹き出してしまう。
　突然に来た娘からのデレに反応しない親など、この世にいるだろうか？――いや、いない！
　雪華もその隣で苦笑している。

「今はそうでも、大きくなったら解るよ。
　命より大事だけど、他所に目移りされたら殺意が芽生えるほど大切な人の意味が」

　穏やかな表情で物騒なことを言う雪華だが、その言葉を咎める人間はこの場にはいない。
　リオンも、少し思案した後で、ピアスの話の疑問を問いかけた。

「浮気したらどうなるの？」
「浮気したら、ピアスが大爆発する」

　リオンの問いに大真面目な表情で答える雪華。
　勿論それは、雪華の精一杯の冗談だったのだが。
　その隣で、娘と同じ目を目いっぱい瞠目する伴侶。
　そして、その伴侶――璃蓮(りれん)は驚いたように呟いた。

「まさか、そんな意味があったとは」
「お父さま、知らなかったの！？」

　伴侶から贈られたピアスについて何も知らなかった様子の父親にリオンは逆に驚くばかりだった。
　