Abissale solitudine－海の底に消えた鍵－ Ⅳ (ページ14)

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標的130【リアクション大王】ページ14

「それはまぁ……そういう年代だから？」
「ふっ、何それ」

　一瞬、雲雀の言葉に詰まりながら、リオンは首をコテン、と小さく傾げる。
　リオンの回答に小さく笑みを零す雲雀の表情は、何処か安堵しているように見えた。

「――リ……」
「委員長！
　校内の見回りが終わりました！」

　雲雀が口を開いたその瞬間、応接室の扉がガラッと勢いよく開けられ、草壁が室内に入ってきた。
　その声に雲雀の声はかき消された。
　雲雀の目は、突然の乱入者へと向けられる。
　その乱入者はというと、雲雀の前に座るリオンの姿を認めると、驚きに満ちた目を見開いた。

「こ、この女子は一体……？
　璃王以外の部外者がいるなんて、珍しいですね……？」

　明日はこの世の終わりか？と、そう考えた草壁の耳に、雲雀の声が突き刺さる。

「何言ってんの、草壁。
　この子はその“璃王”だよ」
「えぇッ！？」

　雲雀の言葉に草壁は声の限りの絶叫のような声を上げる。
　驚かれたリオン本人は「そんな驚くかよ……」と草壁を呆れたような目で見ていた。
　今日一番のリアクション大王かもしれない。

「え、だだだだってり、璃王って男だった筈で――」
「ふはっ、動揺しすぎ。
　身バレすると色々と面倒くさい立場だから、今まで男の振りしてたんだよ。
　まぁ、恭には最初からバレてたみたいだけどな」

　何でもない事の様に空笑いするリオンと、同じく澄ました表情でマグカップに口を付ける雲雀。
　この二人の間で共有されていた事実に、自分は一人取り残されていたという真実を知って、草壁はショックを受ける。
　それと同時に、草壁は所々でピースが繋がったような気がした。

　異様にリオンを気に掛ける雲雀と、彼の言動。
　普段の彼を知る草壁から見たら、やはり雲雀のリオンへの行動は全てが過保護のようにも見えていたのだ。
　一目置いている黒服の男やディーノには対戦を挑むというのに、同じく力を認めている璃王に対してだけは、いずれの二人とも違う態度を示している。
　極めつけは、血を吐いた璃王を血相を変えて保健室に運んでいくのを見た時だ。
　あんなに動揺して憔悴している雲雀を、草壁は見たことがなかった。

　だから、彼らの間で何か特別な関係でもあったのかと思っていたのだが――なるほど、それが今になって納得できた。

「まぁ、そんな訳だから、これからも今まで通り宜しく」
「あ、あぁ、分かった」

　微笑むリオンに草壁は漸く頷いた。