Abissale solitudine－海の底に消えた鍵－ Ⅳ (ページ11)

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標的127【慣れ合うつもりはない】ページ11

「――ってな感じの事があってさ」
「それで……まぁ、結局、次の日に理絵奈が朝、教室に入ってくるなり「璃王君がぁ～！」を始めたから、皆で見切りを付けたんだよね」

　男子と女子が璃王に事のあらましを説明すると、リオンはそれに納得した。
　少しの沈黙の後、女子が言う。

「それにしても、本当にアンタが女の子だったなんてね？
　男子の格好してた時よりも童顔に見えるし、何なら、可愛い顔立ちしてるじゃない」
「面白くもないお世辞(リップサービス)、どうも。
　それで、お前らは味方面して僕に話しかけてきている、と言う訳か」

　女子――黒川花を不快気に睨む、リオン。
　リオンから言わせれば、真実が分かったところで今更味方面されても信用できる筈もなく。
　リオンは警戒心を顕わに油断なく周りを見渡す。

　クラスの人間の言う事が正しいなら、自分の席に置かれていた花瓶と落書きは何だというのか。
　こんな事をするのは、このクラスの連中以外に誰が居る。

「このクラスには、まだ僕を疑っている人間がいるようだからな。
　僕も疑心暗鬼になりながらお前らと関わるのは面倒臭い。
　だから、必要以外僕に関わるな」

　無機質通り越して人間味のない声がリオンの口から発せられた。
　それは今まで通り、リオンはクラスの人間と関わらないという事を強く主張しているかのようだった。

「沢田や獄寺、山本にしても、笹川にしてもだ。
　この学校で、僕と関わってくるのは恭とシャマルだけでいい。
　それ以外は面倒だ」

　それだけを告げると、リオンはガタッと椅子を引いて、席を立った。
　ここにいても不快な思いをするだけだと思ったリオンは、扉へ向かって歩く。
　「リオンちゃん！」と京子が呼び掛けてくる声が聞こえた。
　リオンは京子の方を向くと、微笑を浮かべた。
　それは一瞬のことで、次の瞬間には仏頂面に戻って、リオンは教室を出て言った。

「リオンちゃん……」

　遠ざかっていくリオンの背中を、京子は複雑な心境で見送った。