【募集企画】茜色のヴェール【小説】 (ページ7)

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6話麗らかな朝【クロエ】ページ7

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私の朝は慌ただしい。

礼拝の準備、洗濯、朝食の調理。

身近な事で言えば、髪を結い上げたり修道着に着替えたり等々。

やるべき事は沢山あるのだ。

単に忙しいだけか、私はそうではないと思う。

神父様の為に尽くすのは、私にとってとても幸せな事であるし、この生活は非常に充実していると言える。

ベッドの傍らで眠る我がWahrheit、アンリの額を撫でてやると、滑らかな白い毛並みを感じた。

その無防備な姿に、愛しさを覚える。口角が緩むのは何も不思議な事ではなかった。

いつものこと、身支度一切を済ませ、牛乳が配達される迄は洗濯をしている。

ただ、その彼がやって来るのは早いので、やるべき量の半分も終わらずに朝食を作り始めることになるのだ。

ちりん、とドアベルが鳴ったので、扉を開けて彼を迎えた。

「お早うございます、ケイさん。いつも本当にありがとうございます。ムッシュは元気ですか？」

彼の名は、ケイ・ミルワード。

美しい翠の瞳が印象的な優しくて素敵な男性だ。

そして、Wahrheitのハミントン。

蝶ネクタイがお洒落なまるでタキシードを着た様な子だ。

「やあ、クロエ。これが今朝の牛乳……と、チーズがあるんだけど、いるかい？」

「きゃ、ありがとうございます！是非頂きます！神父様はチーズがお好きなので、お喜びになると思います」

「それは何より。そうだ、昼の2時頃、紅茶を飲みに行くんだけどキミも来ない？」

「本当ですか？是非ご一緒させて下さい！」

ミルク瓶に入った牛乳が表すのは、彼の牛乳作りに対する情熱。

それは甘やかで濃厚で、私の好物の一つだ。

彼はにこりと満足げに微笑むと、ハンチング帽を取ってお辞儀した。

私も小さくお辞儀して、遠退いて行く扉の内側から牛車を見送る。

チーズをダイス状に切り、数本の銀のピックと共にお皿に乗せる。

厚いベーコンは火が通るのに時間が掛かるので、同時にトーストをフライパンにかけた。

香ばしい匂いが部屋に漂い、私の気分を高揚させる。

小さな四角いテーブルに落ちるカラフルなステンドグラスの影。

明るい黄緑のチェックのテーブルクロスは、私のお気に入りだ。

ベーコンの焼き加減に気を取られていると、突如足首に纏わる蜂蜜色。

少し驚いたが刹那、彼女と結び思い付いた人。

それは、一番大切なひと。

「神父様――――」

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