5話 始まる時間【アルフリード】 ページ6
カーテンの隙間から刺す光が眠っている彼の白い横顔を照らしていた。
しばらくすこやかな寝息が独り身にしては広い自室の壁に溶け込んでいく。
「ん……あー…」
またやってしまったか。
もぞもぞと動きながら現在の視界にある情報を探り、フワフワとまだぼやけつつある視界を乱暴に擦って目を覚ました。
彼の座っていた椅子の後ろにはちゃんとベッドがあった。しかしそこには人間が寝たという痕跡はなく、灰色のトラ猫が丸まっているだけだ。
つまり、自分はいつも通り、また机に突っ伏して寝てしまったのだ。
肩の関節が痺れて痛い。
首を回せばコキリ、という音が何度もなる。自慢のさらさらな髪はぴょんぴょんと跳ねていた。
ギシリと椅子を軋ませて立ち上がると朝起きて不機嫌な自分と対照的にすやすやとまだ眠りのなかにいるらしい猫を見据えて言った。
「ウォルフ起きろ。起きねーと飯、やんねーからなぁ。」
と簡潔に言ってのけるとめんどくさそうに頭を掻いて下へと降りていく。
その途中、二階の窓に移る自分の寝癖を手ぐしで乱暴に直した。
ふあぁ、と大きなあくびをすると棚の上から二番目を開け、そこからウォルフの餌と食器を出して餌を皿に開ける。
カランカランと子気味のいい音がした。
するとどこからともなく灰色の塊が自分の腕に飛んできて危うく餌を落としそうになる。
「おーい。わかったから。降りろウォルフ。」
そう言って腕を少し振ると渋々と足元に着地し、きちんと座って待っているのだから愛しいと思ってしまう。
ウォルフはWahrheitだ。
自分はWahrheitについてはまだ知らないことだらけだが、悪い気はしないのだ。
自分のWahrheitが餌を食べているのを見届けると裏口に向かい、サンダルを履いて外に出た。
朝だというのに賑わう街は流石としか言いようがない。
彼は町全体にくまなく吹きわたる心地いい潮風が自分の心を吹き抜けていくのを感じた。
そうしていつもの朝が始まるのだ。
にゃあん
街へと足を踏み出す主人の背中を眺めていた灰色の看板猫は、その尻尾をゆらりと揺らめかせ、外からも見える窓辺で一鳴き。
空になった皿は、脇にかかったエプロンの金の刺繍とともにキラリと朝日に照らされて光った。
まるでこれから始まる時間を祝福しているように。
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【暁 満月】 - oh!⊂(^о^)⊃パスワード分かんないZE☆⊂(^о^)⊃ (2016年12月1日 19時) (レス) id: 2e9a962cec (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - おわりました。 (2016年11月30日 14時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - 更新します。 (2016年11月30日 14時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
天野みかん(プロフ) - 更新しました!関係募集中です! (2016年11月27日 16時) (レス) id: 2b73766c3c (このIDを非表示/違反報告)
天野みかん(プロフ) - 更新させていただきます!! (2016年11月27日 15時) (レス) id: 2b73766c3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏葉 x他6人 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年11月16日 16時