口付けは珈琲のあとで【阿部亮平】 (ページ2)

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2回目の口付けページ2

今日は土曜日で、人も多い。

どれだけ忙しかろうが疲れようが従業員は私、たった1人。

頑張るしかないのだ。

あ、あのお客さん、元彼に似てる...

...って、今何考えた？元彼のことなんてとっくのとうに忘れたはずなのに。

＜すみません＞

「あ、はい！」

いけないいけない。こんなこと考えている暇はない。

仕事をしなきゃ。

・

あ、そういえば今日、阿部さん来てない。

最近は毎日来てくれていたからか、違和感がすごい。

「...阿部さんだってそういu『僕がどうかしました？』へ？」

洗ったコーヒーカップを拭きながら"阿部さんだってそういう時もあるよね"と言おうとした時だった。

誰かの声に遮られた。

...阿部さんだ。

「い、いえ、何も...」

『あれ？何もないんだ(笑)』

笑われてしまった。

なにか失礼なことをしてしまっただろうか。

「すみません...」

そう謝れば、すかさず"いやいや、赤羽さん何も悪くないから！"とフォローしてくれる阿部さん。

「今日もいつものものでよろしいですか？」

『はい！』

・

「阿部さんって、カップケーキ好きなんですか？」

『え？うん、実はね、』

照れながら話す阿部さん。

『でもみんなには内緒』

人差し指を立てて私を見る阿部さんは、とても可愛らしかった。

「何故ですか？」

『えー、だって、成人した男がカップケーキ好きって何か恥ずかしくない？』

「そんなことないですよ？

私もカップケーキ好きなので仲間が増えた感じで嬉しいです」

そう話すと、阿部さんは何かボソッと呟いてニコリと笑った。

「俺、赤羽さんのことが好き」