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冬華の宝石のように青い瞳から、涙が流れている姿が目に見えるようだった。
本当なら……本当なら……わたしは今日も街を散歩したり、楽しく家族と過ごしていた。刀なんて触れることもなかった。
毎日、部屋でのんびり絵を描いて、妹の作ってくれたドーナツを一緒に食べる。
本当なら……本当なら!
ともすれば溢れそうになる激しい感情を無理やり飲み干すと、春寧は妹の腕をそっと引き剥がした。
でも、もう戻れない。いくら嘆いたって変わらない。
「ごめんね……」
きっと見据えた春寧が、家を飛び出した。
「お姉ちゃん!」
妹の鳴き声が迫ってくる。
「置いてかないで!!」
「っ!……」
冬華が倒れる音がしても、春寧は足を止めなかった。
その頬を涙がこぼれ落ちる。
ごめん、ごめんなさい、冬華……もう一緒には居られないの。
前へ進みながら、胸の中で冬華に語りかける。
だけど、いつだってお姉ちゃんは冬華を想っているから。みんなのこと想っているから。
沢山、ありがとうと思う。
沢山、ごめんと思う。
忘れることなどない。
どんなときも、心は傍にいる。
だから、許して。
二度と戻ることのない幸福な日々に背を向け、春寧は泣きながら人混みの中を駆けた。
*
泣きながら駆け抜けていく女性を、顔を青白くさせた少女は建物の影に身を隠してやり過ごした。
そして、夢の端を探す。
ようやく見つけた夢の端に錐をを突き立て、引き裂いた。
少女は心の中の景色を見た瞬間、心を奪われた。
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作者名:映画好き人間 | 作成日時:2022年12月25日 0時