無限列車 ページ2
発車を知らせるベルに続いて、汽笛が鳴り響く。
無限列車の発着駅は発車を急ぐ人々でごった返している。
まだ新しい蒸気機関車は黒々とした車体が、力強くも美しかった。石炭と鉄を混ぜたような匂いが、適量の油とともにここまで漂ってくる。
春寧と杏寿郎は、駅舎の影に身を潜めていた。
春寧たちの属する鬼殺隊は公の組織ではない。
万一警官に見つかれば、日輪刀を帯刀していることを咎められてしまうかもしれないからだ。
「とりあえず刀は背中に隠そう！ 春寧はどうするんだ？」
「袋に入れておくよ」
春寧は薙刀の入った薙刀袋を自分の前に掲げる。
「じゃあ平気だな！ よしっ！ 乗ろう！」
杏寿郎は力強く頷き、春寧も頷いた。
「うまい！ うまい！」
車内に杏寿郎の快活な声が響き渡る。
「美味しい」
春寧もあまりの美味しさに目を見開く。
杏寿郎は駅弁を一口食べてうまい！うまい！と箸を進めている。
んー！ やっぱ焼弁当は最高だな。
ん？ 顬になにやら視線が。
顬に視線を感じて隣を見る。
そこには木箱をからった赤髪の男の子がいた。
口をぽかんと開けて春寧たちを見ている。いや、厳密に言えば杏寿郎と、杏寿郎の前に山積みにされた大量の駅弁を見ている。
春寧はその子の耳にある耳飾りを見てはっと思い出す。
合同任務の子達かも。
鎹鴉が言うには合同任務の人達と瓜二つの外見をしているのに気づく。
「杏ちゃん。後輩たちが来たよ」
「うまい！」
杏寿郎は春寧に気づかず弁当をは食べる。
「あの……杏ちゃん」
「うまい！」
「杏ちゃん！」
「うまい！」
「もうわかったよ！ 美味しいんだね！」
春寧は杏寿郎のことを、杏ちゃんと呼ぶ。
周りからはなぜちゃん付けにするの？ とよく言われる。
理由は春寧がはじめて彼と会った時、二人は十六歳だった。可愛らしくて子供みたいな所が幼いなーと思ってちゃん付けで呼ぶようになったらしい。
そしてようやく満腹になったのか、
「君は、御館様の時の」
杏寿郎は赤髪の少年、竈門炭治郎を見つめて告げた。
炭治郎は覚えてくれていたのと「うまい」以外の言葉を聞けてほっとした炭治郎は、
「はい。竈門炭治郎です。こっちは同じ鬼殺隊の我妻善逸と、嘴平伊之助です」
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作者名：映画好き人間 | 作成日時：2022年12月25日 0時
