虹がかかる空に＊9＊

2 ページ33

智洋side





しげが5歳でひなげしに来た頃、俺も一緒にここに来たからほとんど幼馴染みたいなもん





部屋の奥に置き去りにされてたしげの杖、忘れたみたいで手渡してあげる






大「神ちゃん、あれとって？」

智「はい」

大「お、今日は普通にしてくれるやん。ありがとう」

智「ん？俺いつも普通やけど？」





あの頃から、しげの右足は膝から下がない。
左足はちょっと曲がってて歩くのにも時間がかかる。






俺も親からの虐待でここに来たけど、しげもそうで




親に家に置いてかれる時に寂しくて、走って追いかけて車に轢かれたらしい。






智「おはよう…早いな」

大「おはよう、これやらなあかんからさ」






１時間くらい早く起きて、明日の切断面にクリーム塗って上から厚いサポーター巻いてから義足を履く




同じ部屋になってから、義足の維持がこんなに大変なんて初めて知った。






大「俺今日から、走る練習することにしたわ。神ちゃんより速くなりたいし」






なんて笑ってるけど、しげは昔から人の悪意がわからんやつで





今年の体育祭のリレーは走る人おらんからって、わざと選ばれたの知らんやろな。






義足やからどうせ遅いから、それ笑ってやろうやって言われてんねんで





智「しげ、体育祭本当に走んの？」

大「走るよ、せっかく任せてもらったんやし」

智「しげ、あんな…あいつら」

大「わかってるよ…わかってる。
みんな俺なんか速くないと思ってる、やから頑張んねん」

智「…知ってたん？」

大「わかるよ…俺ずっとこの足やねんで？
変な目で見られんのくらい、慣れてるって！」






何でそんな笑ってんねん、親を恨むとか






足を恨むとか、人を羨ましがったり、そんなんもないんやな





毎日純粋に走りに行ってて




いいやつすぎて心配なんねん。

3→←1生まれてきて(かみしげ)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す