1気持ちで通じて(かみしげ) ページ38
智洋side
大「神山くんやろ?
ろしくな?」
入学式の後、教室に戻った俺にめっちゃ笑顔で話しかけてきたやつがおって
とりあえず無表情のまま頷く
補聴器を付ければ俺の聞こえてない範囲なんてほんのちょっとらしい。
それでも、言葉を学習する時期に聴力を失ったのは大きくて
俺は未だに母音しか発音できてないみたい。
みたいっていうのは、俺も少しやけど聞こえが悪くて正直
みんなの発音と俺の発音の何が違うのかよくわからんから。
俺は大体は聞こえてるし文脈で察することもできるけど、こっちの言葉はなかなか伝わらへん
やから人と話すん、怖いねんな。
上手くない発音、頑張って返しても首を傾げられるか笑われてしまうから
友達とかおらんし、1人の方が楽やと思ってる
どこ中なん?
家この辺なん?
なのにあまりにしつこくマシンガントーク
ずっと話しかけてくるから、早く嫌われてしまえと思って話しかけんなって言った
智「はぁなしぃ…あぇんとぃて……」
ちょっと首を傾げてから、ハッとした顔でまた続ける
大「名前言ってへんかった!
俺、重岡大毅!しげでいいよ、よろしくな!」
めちゃくちゃ笑顔のままの自己紹介
いやいや俺の言葉絶対伝わってないやん、なんやねんこいつ
会話って知ってる?
なんて思うけど、俺の発音で伝わらなかったみたいで
アホみたいにニコニコしてまだ話しかけてくる重岡に何も返せなくて
難聴ってこういう時ほんま不便やなって思う。
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作者名:時生 | 作成日時:2023年4月18日 0時