ＨＥＢＥ - exo - (ページ25)

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会場から抜ければ
緊張が一気に解けた感じ

・

道を歩き電車に乗り
会場からどんどん離れれば離れるほどに
隠していた想いは漏れ出てくる

『ふっ、私もバカだな』

好きな男性の結婚式に出て
奥さんの友人代表を務めるなんて

ほんとにバカだわ

でも、
ミンソクオッパもたぶんバカ

・

ウネは悪い子ではないけど、
決して捨て犬を気に掛けるタイプではない

ミンソクオッパの思い描く優しいウネは
私の知っているウネではない

『あーあ、ほんとムカつく』

悪態をついていないと
やってられない

ウネは悪くない
そんなこと分かってる

好きという気持ちを隠した自分
行動しなかった自分

全部、
自業自得って分かってる

でも、
気持ちって簡単じゃないもの

頭では分かってるけど
好きはまだ消せてない

・

『あ、この公園か』

私の家に帰る道に
二人が捨て犬を拾った小さな公園はある

毎日のように前を通るこの公園

『捨て犬なんて見たことがないんだけれどっ』

悔しいような気持ちに促されて
公園の中に踏み入ってしまえば
さらに悔しさがこみあげてくる

・

「クーン」

『参ったな』

「クーン」

幻聴だと信じながらも
目を凝らしてしまう

『はあ、嘘でしょう？』

ブランコの後ろにある箱

「クーン」

中を覗けば
クリーム色の子犬が１匹

泥で汚れて
「僕おなかすいたよ」と言うように
鳴いている

『これって幻聴と幻覚？』

ウネの結婚が悔しくて？

「クーンクーン」

・

目の前の光景が信じられずにいれば
顔に感じる水滴

『雨？』

まるで雨というものを
理解しているかのように
慌てだす子犬

「幻覚なんかじゃないよ」と言うように
箱を出ようとしている

『あっ、大丈夫？』

咄嗟に子犬に触れてしまえば
それまでだった

この温かさが現実なのだと言っている