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「明日はいよいよ雄英体育祭ね」
「今年はオールマイトが来るらしいよ」
明日の雄英体育祭を前に、3年生とはいえど学生である私達の気持ちは弾んでいた。3年ステージの予想も楽しかったけれど、個人的なメインはやはり1年ステージである。実際、事前情報が少ない分色々な推測が飛び交って面白いのだ。私は個性の分人より知れる情報が多いので出来る限り黙ってはいるが、それでも経営科3年ともなると周りの目も相当養われている。
ポケットで震えたスマートフォンの通知に目を移すと、スケジュールアプリから「メンテナンス」とリマインドされていた。体育祭の前に義眼の点検を済ませようとしていたことを思い出し、保健室へ向かった。
「義眼のメンテナンスに参りました」
「いらっしゃい、早かったね」
「ああ、リカバリーガールもういらしたんですね。すみません」
座りな、と促されて保健室の椅子へ腰を下ろす。私の右目はもう無くなっていて、そこには本物と遜色のないくらい精巧な義眼が嵌められている。昔にそこそこ大きな事件に巻き込まれて失ってしまったせいで、様々な企業から勧められてその中で1番良い物らしい。視神経さえ少しでも生きていればまた見えるようになる、だとか言われたが、今のところその様子は無い。ただ作りは自然なのでそこが重要だと思う。
よくある健康診断みたいに私の目にライトを当てたり、眼球を動かしたりしてリカバリーガールが観察する。メンテナンスといっても、大体はこの外観検査で終わることが多い。身体機能に於いての専門家が、左目と比較して問題があると判断した時に初めて義眼の会社が介入することになる。実際馴染まないうちは何度か経験したが、大変面倒なのでここ数年は無くなって安心している。
「個性は最近使ったかい？」
「負担の無い範囲でちょくちょくは使っています」
「それならいいよ。あんたなら悪用することもないだろう」
「はい」
「もし視えても……いや、すまないね」
謝る彼女に「大丈夫です」と言って席を立った。メンテナンスの礼を述べて保健室を出る。とうに慣れてしまったが、左側だけの視界は偶に狭く感じる。もうそのことについて感慨が湧くことなど滅多に無いが、もしもまた右側が視えたのなら私はどうするだろうか、と想像することはある。
神経の焼き切れる様な壮絶な痛みに耐えて今度は自ら過去や未来を視るのだろうか？ それともまた暗くて湿った場所に攫われて閉じ込められるのだろうか？
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廿楽(プロフ) - むさん» コメントありがとうございます。お褒めいただけて嬉しいです！応援も大変励みになっております。頑張ります！ (2021年10月18日 1時) (
レス) @page21 id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - コメント失礼します、とても面白くて続きが待ち遠しいです！文章がとても好きです。これからも頑張ってください、応援しています！ (2021年10月17日 20時) (レス) @page4 id: e0a285cdcb (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - いくまさん» コメントありがとうございます。大変励みになります！文章の表現諸々を好みと言っていただけて嬉しい限りです。遅筆ではございますができる限り更新したいと思いますので、これからもどうかよろしくお願い致します。 (2021年9月21日 18時) (レス) id: d79b86d8d5 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。作者様の作品、全て読ませて頂いております。文章の書き方、構成、表現が全て私の好みに当てはまっており毎回の更新とても楽しみにしています。これからも更新諸々頑張って下さい。応援しています。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2021年8月26日 4時
