6 ページ7
自分のクラスの生徒すらまともに覚えていない爆豪がその女生徒のことを知っている筈も無かった。睨み合い、というには両者の表情がちぐはぐだったが、それが数秒続いた。この数分で最近の視線の主が察視だと確信した爆豪は口を開いた。
「やっぱてめェが最近の気色悪ぃ視線の正体か」
肯定を示しながらもしゃあしゃあとしている察視に爆豪の眉間の皺が増える。およそ年上に対する態度ではない爆豪に、察視は困ったような表情で続けた。
私は経営科の授業の一環として、体育祭での生徒の活躍を予測しなければいけないから視られないのは困るなあ」
間髪入れずに爆豪はその言葉を跳ね返す。それが予想内だという様に察視も譲る気を見せずに返した。話が通じないタイプの人間だ。心底面倒だという感情を隠しもせずに爆豪は舌打ちを鳴らした。
その様子を見て愉快そうにつらつらと言葉を並べる察視は爆豪からしたら鬱陶しいことこの上なかったのだろう。少しでも譲歩と取られる質問をしたのが間違いだった。しまった、という気持ちと相手がどう出るのかという好奇心に眉をひそめた。
彼女の提示したメリットは、爆豪自身の成長の保証だった。爆豪の能力の伸びを観察することが目的であるから、裏を返せば「見られている限りは成長している」ということになる。それに対して爆豪は一蹴、必要がないと吐き捨てた。爆豪勝己は冷静な視点も持ち合わせた人物であったため、自身の成長度合いなどは他人を介さずともある程度把握できるからである。
察視は諭すように説得を続けた。もっとも、この件は彼女へのメリットの方が大きいために説得というよりかは言いくるめに近いのかもしれない。プライドの高い爆豪に対して、少し挑発をするような発言。その後の察視自身を測定器程度に扱ってよいという献言の様な物言いに、これ以上付き合っても時間の無駄だと判断した爆豪が折れた。相手は体育祭でぶつかることの無い上級生であり、この催しに選手側として積極的ではない経営科だ。支障は無いだろう。察視が自分の情報を売ることも頭をよぎったが、そういう雰囲気は不思議と感じなかったのである。
彼女は軽く礼を述べて、にこやかに爆豪が優勝するだろうという言葉を口にした。その性格から、どちらかと言えば敵を作るタイプである爆豪は、その反応が妙に奇妙な感慨を覚えさせてぶっきらぼうにひと言吐き捨てた。燃える様な瞳には利用できるものは利用して優勝する、という強い意志が宿っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 125人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
廿楽(プロフ) - むさん» コメントありがとうございます。お褒めいただけて嬉しいです！応援も大変励みになっております。頑張ります！ (2021年10月18日 1時) (
レス) @page21 id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - コメント失礼します、とても面白くて続きが待ち遠しいです！文章がとても好きです。これからも頑張ってください、応援しています！ (2021年10月17日 20時) (レス) @page4 id: e0a285cdcb (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - いくまさん» コメントありがとうございます。大変励みになります！文章の表現諸々を好みと言っていただけて嬉しい限りです。遅筆ではございますができる限り更新したいと思いますので、これからもどうかよろしくお願い致します。 (2021年9月21日 18時) (レス) id: d79b86d8d5 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。作者様の作品、全て読ませて頂いております。文章の書き方、構成、表現が全て私の好みに当てはまっており毎回の更新とても楽しみにしています。これからも更新諸々頑張って下さい。応援しています。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：廿楽
| 作成日時：2021年8月26日 4時
