18 ※ここからプロヒーロー編 ページ19
「5年振りくらいかな？ 元気そうでよかった」
弱冷房に総レースの袖がゆるりとそよぐ。雰囲気の良い照明に照らされたレースは特殊な生地なのか、螺鈿細工の様に神秘的だった。目の前の人物はすっかりフォーマルドレスを着こなす女性になっていた。もっとも、初めて会った時から彼女は大人びていたので面影は十分に残っている。ただ確かなキャリアを感じさせる振る舞いはあの頃より更に洗練されていたのだった。
「突然で申し訳ないのだけれど、こちらが契約書類になります」
「……相変わらず気味悪ィな」
「ふふ、口を開いてひと言目がそれなら安心したよ」
吐き捨てる様なひと言さえ想定内と言う様に笑って受け入れる女性――察視Aに爆豪は得も言われぬ違和感を抱いていた。違和感というには疑問や猜疑心が混ざりすぎていて、まるで不純物みたいに胸につっかえている。変わらない察視の姿勢はそこにほんの少しの安堵を垂らした。ビジネスの話、要するに本題でだけ彼女の雰囲気は日本刀の様な冷たさと鋭さを持っている。様々な修羅場を経験してきたトップレベルのプロヒーローである爆豪でさえも唾を吞んだ。それなのに、次の瞬間には同窓会さながらの温かさを纏うのだから、気味が悪いという他無い。
「つかてめェどっから嗅ぎ付けたんだよ」
「うん？ 偶然上司が『大・爆・殺・神ダイナマイトとの企画なんだが誰が適任かね』って言うから、知り合いですって名乗り出ただけ」
「そんなんでいいんか大企業がよ」
「上に行けば行く程上司が自由かな」
彼女が吐いた溜め息には苦笑が滲んでいたが、「雄英と少し似てるかも」と微笑む顔に不満は感じ取れなかった。
今回爆豪と察視が再会したのは互いの仕事の契約確認であり、その為の会員制高級レストランだった。手配は全て彼女の上司が行ったらしい。その契約というのが、彼女の会社から出るトレーニング器具とのタイアップだった。トレーニング器具と言っても最新鋭、ハードな筋トレから繊細なリハビリまでを可能にする高性能器具を宣伝する為のコラボレーションといった具合だ。本来は察視の部署とは無関係らしいが、彼女の肩書上確認は回ってくるらしく、それならば自分で赴いた方が手間が少なかったから名乗り出たと言った。どこまでも合理的な人間だと思った。
「にしても受けてくれるとは思わなかったな、心境を聞いてもいい？」
別に、と逸らしても良かったが、こちらが話せば彼女の話も聞けるのではないかと考えたのだ。
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廿楽(プロフ) - むさん» コメントありがとうございます。お褒めいただけて嬉しいです！応援も大変励みになっております。頑張ります！ (2021年10月18日 1時) (
レス) @page21 id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - コメント失礼します、とても面白くて続きが待ち遠しいです！文章がとても好きです。これからも頑張ってください、応援しています！ (2021年10月17日 20時) (レス) @page4 id: e0a285cdcb (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - いくまさん» コメントありがとうございます。大変励みになります！文章の表現諸々を好みと言っていただけて嬉しい限りです。遅筆ではございますができる限り更新したいと思いますので、これからもどうかよろしくお願い致します。 (2021年9月21日 18時) (レス) id: d79b86d8d5 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。作者様の作品、全て読ませて頂いております。文章の書き方、構成、表現が全て私の好みに当てはまっており毎回の更新とても楽しみにしています。これからも更新諸々頑張って下さい。応援しています。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2021年8月26日 4時
