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まさか爆豪君とこのタイミングで遭遇するとは思わなかった上、彼の試合をおよそ2試合程見逃した事実も信じられないが、それを本人に言及されるなんて思わなかった。試合の準備の為に去っていった爆豪君との会話を思い返していた。
柄にも無く動揺してしまい、いつもの交渉じみた意地の悪いことを口にしてしまったが、幻滅されなかっただろうかと一抹の不安を覚えた。そこまで考えて、それこそ本当に自分らしくないことに気が付いた。爆豪君は言ってしまえばただの研究材料の一部だ。できる限り彼のパフォーマンスを落とすようなことはしない、ということが私の心掛けるべき点ではあるが、裏を返せば私自身がどう思われようが彼が実力を発揮できればいいわけである。
一瞬、体感温度が著しく下がったように感じられた。なぜ自分が彼に幻滅されることを恐れたか理解できなかったせいだろうか。随分と長く立ち尽くしていたような気がして、決勝戦開始前のアナウンスで漸く我に返った。このままでは経営科としての矜持すら崩れかねないと思い、動揺だとか自我への懐疑心には蓋をして観客席へ戻った。
熱の入ったアナウンスが試合の始まりを告げる。正直実力ならば轟君と爆豪君はどちらが勝っても不思議ではない。轟君が緑谷君との試合みたいに炎を使ったとしても、恐らくは爆豪君の爆破の練度には及ばないだろう。個性に体温が関係しているなら耐久戦には有利かもしれないが。
それでも私は爆豪君が勝つと信じ切っていた。自分の勝利予想に意地になっているわけではなく、彼の実力と、その『勝利への執着』を心から信用していたからである。彼が見せる眩しいくらいの自信は見ていて気持ちが良くて、胸のすく様な心地になるのだ。きっと私はもう彼のファンなのだ。粗暴で爆発物みたいな、けれど真っ直ぐで努力家なヒーローを応援したいと思っていた。
爆豪君が爆破で大きく跳んで、空中で自らを銃弾の様に回転させる。回転による勢いも加わって、麗日さんとの試合よりも高威力の攻撃で試合を決めにいった。爆風が来ない、ということは轟君はどうやら炎を使わなかったのだろう。そうなると必然的に氷塊で自分を支えなければいけないが、爆豪君の火力にさすがに耐えきれなかったのか、煙幕が晴れて見えたのは轟君が場外で気絶した姿だった。爆豪君は何かを訴えて轟君の胸倉を掴んだが、ミッドナイトによって制止されていた。
こうして今年度の1年生の雄英体育祭は幕を閉じた。
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廿楽(プロフ) - むさん» コメントありがとうございます。お褒めいただけて嬉しいです！応援も大変励みになっております。頑張ります！ (2021年10月18日 1時) (
レス) @page21 id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - コメント失礼します、とても面白くて続きが待ち遠しいです！文章がとても好きです。これからも頑張ってください、応援しています！ (2021年10月17日 20時) (レス) @page4 id: e0a285cdcb (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - いくまさん» コメントありがとうございます。大変励みになります！文章の表現諸々を好みと言っていただけて嬉しい限りです。遅筆ではございますができる限り更新したいと思いますので、これからもどうかよろしくお願い致します。 (2021年9月21日 18時) (レス) id: d79b86d8d5 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。作者様の作品、全て読ませて頂いております。文章の書き方、構成、表現が全て私の好みに当てはまっており毎回の更新とても楽しみにしています。これからも更新諸々頑張って下さい。応援しています。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2021年8月26日 4時
