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「てめェこの後どうすんだ」
「本社戻るかなあ、都会の夜を彩る灯りのひとつになるよ」
「今から残業たァご苦労なこったな」
爆豪が堂々と皮肉を言っても「好きだからね」と彼女は笑った。爆豪には察視の仕事のことはわからないが、彼女が満足ならば外野が無理をするななどと言うのは野暮だとわかっていた。
「もしかしたら次回は上司も来るかもしれないけれど、爆豪君は今日の感じで問題ないから。何かあったら前日までに連絡くれれば対応できるので」
「ああ」
「そうそう、もし私が出られなかった場合はこちらに連絡よろしくね。別の担当者が何人かいるから、常に誰かしらには繋がる」
同時にその連絡先がメールで送られてきたが、恐らく使うことは無いだろうなと爆豪はすぐに画面を閉じた。詳しいことは追って連絡するから、と言いながら察視は予め呼んでいたタクシーに乗って職場へ戻った。
1人で歩く夜道はもう風も冷たくなってきていて、冬が近いのだということを感覚に訴えている様だった。信号待ちで見上げた高層ビルには点々と光が灯っていて、世の中には察視の様な社会人も多いのだろうと考えた。
5年を経て成長した彼女は全てが磨かれていて眩しいくらいだった。20代前半の女性が着るにはシックなデザインに思われるワンピースを着こなし、質の良さを滲ませるアクセサリーがそれを上品に締めていた。メイクは華美ではないが、流行を押さえてなお服装に馴染んだ端然さがあった。勿論知識量や弁舌の滑らかさも高校時代より進歩していて、伊達にあの若さで重要であろうポストに就いていないのだ、と認めさせられた。
それなのに、彼女は自分を『企業の犬』と卑下したり、久しぶりに会った爆豪の態度にも言及しないのだからそれが不思議だった。爆豪の態度については世間でも少なからずマイナスな意見が存在していて、未だに同業者でも文句を言う者はいる。ところが察視Aは、はじめ――高校生の時から彼の態度に関しては特に気にしていなかった。
それは察視が、自分が人からどう見られていようが構わずに自分のやりたい事をやる性質を持っているからに他ならない。その点は爆豪が察視に一目置くに値する理由の1つであり、彼と彼女の共通点だった。
忘れていた熱が煙を上げ始めた。ずっと燻って隠れていた青春にまた火が灯る。次に会う時は今回躱された察視の話を聞き出してやる、と爆豪は不敵に笑ったのだった。
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廿楽(プロフ) - むさん» コメントありがとうございます。お褒めいただけて嬉しいです！応援も大変励みになっております。頑張ります！ (2021年10月18日 1時) (
レス) @page21 id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - コメント失礼します、とても面白くて続きが待ち遠しいです！文章がとても好きです。これからも頑張ってください、応援しています！ (2021年10月17日 20時) (レス) @page4 id: e0a285cdcb (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - いくまさん» コメントありがとうございます。大変励みになります！文章の表現諸々を好みと言っていただけて嬉しい限りです。遅筆ではございますができる限り更新したいと思いますので、これからもどうかよろしくお願い致します。 (2021年9月21日 18時) (レス) id: d79b86d8d5 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。作者様の作品、全て読ませて頂いております。文章の書き方、構成、表現が全て私の好みに当てはまっており毎回の更新とても楽しみにしています。これからも更新諸々頑張って下さい。応援しています。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2021年8月26日 4時
