＿＿ ページ30
いつの間にかもうすぐアパートだ。いつもは疲れの中一人で黙々と帰る道が今日は早く感じて、スマホを耳に当てたまま振り返った。
確かに人の気配はしていたけど、阿部さんと電話していたからかその気配も消えたし、私の中の恐怖も消えた。
こんなふうに落ち着いた気持ちで阿部さんとお話したのは初めてかもしれない。
「あの、そろそろ……」
落ち込んだ私に素敵だと言ってくれたのに、上手く返せそうもなくて、アパートが近い事を理由に通話を終わらせようとした。
「お家着いた？」
「ええ、はい。あの、」
「ん？」
低いけど相手を威圧しない優しい声。
「……ありがとうございました」
スマホから少しだけ離れて、聞き取れるかどうかギリギリの声だった。素直じゃない私はやっぱり彼の周りに居そうな綺麗で可愛いタレントさんたちとは違う。多少生意気だったり可愛げなくても、彼女達のような見た目なら多少のことは許される。そんな業界に暫く居て、男も女もその辺はあまり大差ないなと感じた。
見た目で劣るのだから、素直になれればいいんだろうけど、やっぱり芸能人の彼には一線距離を置いてしまうんだ。
「今日は初めて君と長く電話ができた記念日だね」
「はい？」
「ふふ、また二人で記念日作ろうね。ゆっくりやすむんだよ。おやすみ」
「……お、やすみなさい、」
どうしてだろう。どうして彼はいつも去り際にいい思い出として去ってくれないのか。毎回こうして胸にいつも凝りが残る。
…………非常に、重たいです。阿部さん。
.
久しぶりに家でゆっくり眠れたおかげで翌朝はスッキリとした目覚めだった。
今日は会議からのロケがあって、スタジオ撮影もある。そして明日はロケハンだし、次の日もバタバタする。
…………うーん、今度はいつ我が家に帰ってこれるかしら。なんて苦笑いしつつも、寝不足が解消されると仕事自体は大好きなので私は数日分の着替えをカバンに詰めてルンルン気分で家を出た。
その日はとても調子がよくて、アキラさんにも「顔色いいな！ ミスもしてねえし。やっぱり睡眠の質って大事っつーことな」なんて言われてお互いできる限り家に帰ってしっかり寝れるようにしようと誓う。ま、誓うだけで叶わないことが殆どだけどね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2648人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます！刺さってくれて良かったです😆ちょっと独特なので大丈夫かなぁって思うとこもありますが楽しんでほしいですね😊多分終わる予定です！代理もですか！それはありがとうございます😌頑張ります😆 (2022年10月25日 7時) (
レス) id: 61a2c67a9c (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんにちは(*^^*)このお話が私の中で1番刺さってます！！好きすぎます！！！次で終わりなんですね(´；ω；｀)代理の方もめちゃくちゃ楽しく読ませて頂いてるので、これからも楽しみにしています(*^_^*) (2022年10月24日 18時) (レス) @page50 id: b572eb741e (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - Sionさん» ありがとうございます😊 気になってもらえるように終わらせました😌 移行まで暫くお待ちください！ (2022年10月24日 17時) (レス) id: 61a2c67a9c (このIDを非表示/違反報告)
Sion(プロフ) - すごいドキドキでの移行！！続き楽しみです❤❤ (2022年10月24日 16時) (レス) @page50 id: 910c73b32d (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - レリリさん» コメントありがとうございます！嬉しいです😆 ここから盛り上げていけたらいいなぁって思いで書いております😌 (2022年10月19日 9時) (レス) id: 61a2c67a9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2022年6月26日 10時
