うちの阿部、取り扱い注意。【緑】

＿桃side ページ27

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「あれ、阿部ちゃんは？」

いつもなら楽屋に皆が集まったら始まるはずのクイズが始まらないから変だなぁって周りを見たら、うちの秀才くんが居ない事に気付いた。
照との話を途中で終わらせたのはちょっと胸騒ぎがしたから。確かさっきまでめめと話してなかったっけ？


「阿部ちゃんいつの間にか消えたよ」
「は？ 何処に？ もうすぐ収録じゃねえか！」
「さあ？ トイレとか？」
「……ちょっと聞くけど、阿部ちゃんと何話してた？」
「仕事の話と、あの子が居た、」


ほらやっぱりな！！ 絶対阿部ちゃんあの子に会いに行ってんじゃんか！ 俺はめめの話を最後まで聞かずに楽屋を出たんだけど、その俺が去った後でめめが「二人とも、あの子ってとこまでしか言ってねえし」と、呆れてるめめが居たらしい。
だいたい行くとこなんて予想はつく。きっとあの子、Aちゃんが居るところは自分のデスクかスタジオだろう。急いでスタジオに向かう。

するとほら案の定、仕事をしてるAちゃんの隣で何故か円周率を言ってる阿部ちゃんが居た。
なによ、うちの阿部ちゃんは阿呆なんか？
頭良すぎて一周も二周もして、逆に頭イカれちまったのか！？
そんな阿部ちゃんの隣では、ぽかーんとしているAちゃんが居て、Aちゃんの周りには色んな小道具が散らかっている。あれ絶対今日の収録で使うやつだろ！ 絶対邪魔してんじゃん！！


「あーべーちゃんっっっ！！」


余裕かまして今も円周率を言い続けてる阿部ちゃん目掛けて走る。バタバタと足音を立ててるのに阿部ちゃんは俺に気付こうとしなくて、代わりにA
ちゃんが阿部ちゃんから俺へ視線を移したのは分かった。

　
「阿部ちゃん！ こら！ 楽屋戻るよ。て、やめねえし。なんでこうなってるの？」
「……何故か円周率を言えば気持ちが落ち着くとかで」
「はい？」
「うーん、よくわかりません」


当事者がよく分かんないんだったら俺は尚更わけわからんなのよ。それでも仕事の邪魔になっているのは確実なので、阿部ちゃんの背後に回って背中を押した。


「ごめんね、お仕事の邪魔しました。この子回収していきまーす」


阿部ちゃんの背中を押せばようやくこっちを振り返ったけど、まるで呪文のようの円周率を言いながらAちゃんに手を振っていた。
どうしよー、ほんと壊れてきたかもうちの阿部。
　

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