【STORY4-15 生かされた意味】 ページ41
私だけ生きている。
私だけ生き残ってしまった。
「はァッ！！」
それが、幼い私が復讐の前に捕らわれていた『罪悪感』だった。
「ふんッ！」
どれくらい経っただろう。
恐らく、途方もない戦いになるであろう。
彼女は、狂鬼の力を次第に受け止めれなくなってきた。
血走り始めた目に、角ばり始めた指に、長く伸び始めた爪は、初期症状であった。
一方、彼はひどく息を乱し、時折咳を繰り返し始めた。
互いにゆらりと構え、それは見るからに最後の一撃であろう。
「はあ、はあ･･････。･･･終わりにしてやるよ、王様」
「･･････っそれはこちらのセリフだ、マリオネット」
息をのむ。その間は一瞬で、互いにしか理解し得ない間で、その空間は一切干渉出来る隙は無かった。
外では黒煙が上がる。
多くの血が流れる。
それを吸い込む地は、何も言わない。
怒号は銃声にかき消され、刃の交わる音は灰色の空に空しく溶ける。
「･･････」
「お前が求めていたのは、私と同じだ。夜切」
彼の刀は、遠くに転がっている。
彼の額には、彼女が手にした鬼邪琥の刃先。
「ハッ！何を言い出すかと思えば･･････さっさと――」
「『許し』だ」
彼女の瞳は、諭す聖母のようであった。
彼は思わず、息を飲み込む。
「途中、私に隙を見せただろう。グレイスの娘ならいくらかは報われるとでも思ったか――甘えるなよ、咎人が」
「！！」
「『台本』通りに進むと思ったら大間違いだよ、夜切」
彼は、悔しそうに唇を噛む。
「なぜだ！！なぜだ、マリオネットォォ！！一突きすれば、お前の目的は果たされる！放棄するというのか！！長年かけた己の目的を！！己の生きた意味を！！それを自ら放棄して、お前は何のために生を望む！！なんの為に！なんの為に！！」
「―――愚問だな」
彼女は、静かに刀を鞘にしまう。
「『許し』のためだ―――」
「っ！？！」
「それが、恐らく･･････。母が残した私の生きる意味だ」
「―――なぜだ、なぜ、どうして、･･････」
「母を愛したお前ならわかるだろう。母も、お前も、私も―――」
――この世界を愛していたからだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シキシマ - とにかく、「この作品が大好きです！」という思いが伝わって良かったです。私の感想が少しでも作者様の力になれたこと、凄く嬉しいです。いや、嬉しすぎます。これからも、この作品の読者の一人として応援しています。長文失礼しました。 (2018年8月4日 9時) (
レス) id: 407ab994ea (このIDを非表示/違反報告)
シキシマ - まさか、こんなに喜んで貰えるなんて。しかも、ご丁寧に一話分もお返事を書いてくれて本当にありがとうございます。超感激しました(笑) (2018年8月4日 9時) (レス) id: 407ab994ea (このIDを非表示/違反報告)
シキシマ - 世界観やストーリーが面白いなんて言葉じゃ足りないくらい素敵ですし。しかもお話に出てくるキャラクターが多いのにもかかわらず、誰と誰が会話しているのかがパッと頭に浮かんで、感情の表現の仕方もすごく好きです。 (2018年7月27日 2時) (レス) id: 407ab994ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：†血染 架朱† | 作成日時：2017年3月12日 18時
