恋の教え【その13】 ページ13
「退院おめでとう、空くん
もう夜更かししちゃダメよ？」
あらからバレずに自分の病室へ戻った。
目が覚めるとお母さんが帰る準備をしていて
俺は最後の検診を受けに行った。
問題もなく無事退院することになった。
「本当にお世話になりました！
ほら、空もお礼言って」
お母さんにそう言われたことには気づいたけれど
それよりも、Aがどこかにいないか
ずっと探していた。
「空くん？忘れ物した？」
看護師さんにそう言われ首を横に振る。
「…Aって、まだ寝てるの？」
心臓が痛くなった。
俺の質問に看護士さんが罰の悪そうに
顔を歪めたから。
「Aちゃんは……」
「やっぱいい！なんでもない！
ありがとう、ございました」
それ以上聞くのが怖くて頭を深く下げた後に
病院をとび出た。
ポケットに異物感を感じて手を突っ込めば
昨日貰ったAからの手紙が入っていた。
広げてみると、書き慣れていないような字が
連ねられていた。
空へ
たいいんおめでとう
空がいなくなるのはとてもさみしいです
Aはあしたからむずかしいしゅじゅつをします
せいこうりつは45%です
すごく、こわいけど空とみた星を思い出すと
がんばれそうなきがします
さいごのひにさよならを言えなくてごめんね
もしもAのしゅじゅつがせいこうしたら
またAは空にあいたいです
もしもAのしゅじゅつがしっぱいしても
やっぱりAはうまれかわって空にあいたい
空がだいすき
また会えるなんて当たり前だと思っていた。
だけど、Aの抱える病気は俺が思っていた
数倍も大きく難しい病気だったんだ。
まだ、走れば間に合ったかもしれない。
走ってAの病室に行って
手術頑張れって、また会おうって
言えたかもしれない。
手紙を読み終えた俺はAに会うのが怖くなり
目を瞑って逃げたんだ。
今会った時に、もう二度と会えないかもしれない
という可能性に恐れて逃げたんだ。
ずっと、心残りだった。
続く (更新停止中)
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作成日時：2018年12月27日 23時
