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「落ちこぼれ」
「ろくでなし」
「失敗作」
「出来損ない」
少し耳をすませれば聞こえる陰口の数々は、確実に幼い私の酸素を奪っていた。
六眼を持ち、今では「最強」と謳われる兄様。
兄様の妹である私には、何の才能もなかった。
かろうじて呪霊は見えたものの、病気がちで、呪霊を祓うどころか一般人よりも体力がない。呪力もない。
呪術師になるには絶望的な私に、五条家は早々に見切りをつけた。
元々、兄様は大好きだった。
だけど事あるごとに比べられて、罵られて、比べられる相手を好きでい続けられるほど、心に余裕はなかった。
日に日に、悟兄様のことが嫌いになっていった。
「また病気?」
「らしいわね、いきなり居間で倒れたって」
「今月何度目よ、自己管理が出来ていないんでしょう」
「お兄様は立派に活躍されているのにねえ」
障子越しに、使用人の会話が聞こえた。
(私だって、好きでこんな体に生まれたわけじゃない、好きでこの家に生まれたわけじゃないのに)
ギュッと下唇を噛み締める。
音を立てないように長い廊下を進み、角のこじんまりした部屋でうずくまった。
(兄様が羨ましい)
美しい容姿に、六眼。呪術師として自立されていて、皆に期待を寄せられている。
私もそうなりたかった。
それか、兄様の妹になんか生まれたくなかった。
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作者名:甘宮 | 作成日時:2023年8月23日 15時