緑色のあの子 ページ45
石でできた壁は湿っていて、所々裸電球が吊り下がっていた。
時折電球が点滅する度に、ひとらん先輩の私の手を握る力が強くなる。そもそも手を握るな。
不気味な静寂の中、足音だけが反響する。
やがて、広い空間に行き着いた。
｢ここは…？｣
辺りを見回しながらさらに奥へと進む。
｢暗いね、電気付けるよ｣
ひとらん先輩に頷くと、ぱっと明かりがつき、息を呑んだ。
牢屋が並び、石畳には血痕と、何か固いもので削られた跡。
牢屋の中に、一人の子供が横たわっていた。
｢あ、ぁ…｣
牢屋にいるにしては綺麗な茶髪に、長い前髪からちらりとのぞくエメラルドの瞳。
｢ゾム…？｣
子供が、ぴくりと身体を震わせた。
私と目が合い、とぎこちなく口を開く。
｢いっ…いやや…！！｣
激しい拒絶に、少なからずショックを受ける。
悲しみではなかった。
これは、彼をこんな風にした誰かへの憤り。
｢ゾム？ゾムでしょ？何があったの？あの時引き取られたんじゃなかったの…？｣
｢…A…？Aやんな…？｣
薄暗かったエメラルドの瞳に、光が宿った。
｢…！うんっ…！Aだよっ、会いに来たよ。私と一緒に来て｣
｢あかん、だめなんや｣
｢…どうして？｣
｢おくさまが、怒ってしまう｣
どういうこと？と聞き返す間もなく、さっきの輝いた瞳は一転、再び薄暗い色に変わってしまった。
｢ひとらん先輩、牢屋壊せますか｣
｢無茶言うなあ。やるだけやってみる｣
ひとらん先輩が刀を抜こうとした瞬間、女の人の凛とした声が響いた。
｢なんの御用ですの？｣
｢…！！｣
足音なんて全く聞こえなかったのに。
非常にまずい展開だ。
｢ゾムを返してください｣
｢どういうことかしら、お嬢さん。いいえ、Aさん…でしたっけ？｣
｢なんで名前を…！｣
｢
…そもそも、引き取った覚えはあっても、盗んだ覚えはありませんから、返してくれなんてお門違いじゃなくって？｣
そう言って女性はポケットから鍵の束を取り出した。
｢彼が欲しいのね｣
女性、おそらくベルジェ夫人は、おもむろに牢屋の鍵を開けた。
｢おいで｣
｢…はい、おくさま｣
もはやあの頃のゾムは見る影もなかった。自由奔放さなんてかけらもない、夫人に従順な子供。
｢(あなたに一体、何があったの)｣
夜会での噂話が頭をよぎる。
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甘宮(プロフ) - Kyo1214さん» コメントありがとうございます！つよつよな夢主ちゃん私も気に入ってます😽︎ (10月31日 21時) (
レス) id: 7aa9b04f20 (このIDを非表示/違反報告)
Kyo1214(プロフ) - 甘宮さんの作品の夢主が大好きです！酷い目に遭ってもめげずに努力する夢主に惚れてしまいます！ (7月26日 17時) (レス) @page50 id: 641161536f (このIDを非表示/違反報告)
甘宮(プロフ) - wineさん» 返信遅れてすみません！他のアカウントの連載や、用事が色々重なって一時的に削除という形をとらせて頂きました。ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありませんでした。温かいお言葉ありがとうございます。再び続編を出す予定ですので気長にお待ちください。 (2023年4月1日 10時) (レス) id: 7aa9b04f20 (このIDを非表示/違反報告)
wine(プロフ) - 更新お疲れ様です！続編がなくなってますが、大丈夫でしょうか…？話が面白くなってきてちょこちょこ見に来てます。次の更新楽しみにしてますね！ (2023年3月17日 12時) (レス) id: a177b10476 (このIDを非表示/違反報告)
甘宮(プロフ) - 来空さん» 夢主褒められるの嬉しいです〜！これからも夢主ちゃんをよろしくお願いします！ (2023年2月27日 8時) (レス) id: 7aa9b04f20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：甘宮 | 作成日時：2022年11月10日 16時
