Always to your side (ページ3)

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　華麗な蝶を装いながら、鋭い毒牙を隠した蜘蛛のような女性社員に嫌気がさした私は、こっそりと船内から抜け出し少し風の強い甲板へと出て来た。今日の為だけに綺麗にセットした髪が、風によって崩れるのを防ぐように私は手のひらで軽く頭を押さえる。
　軽く周りを見回してみても、私よりずっと離れた場所で二・三組の男女がイチャついているだけだった。明るすぎるほどの船内に比べれば、ここは軽い間接照明のようなライティングと、夜の帳が距離を縮めたい男女にはうってつけのステージだった。
　私はそんなステージに背を向けると、自分の立つ甲板と海とを隔てる柵に両手をついて軽く体重を預ける。海の上から見る街の光はキラキラと輝いていて、日常を送っている場所と同じとは到底思えない程の美しさだった。

「隣……いいですか？」

　その時、不意に隣から声を掛けられ私はそっちの方へと顔を向けた。そこには、ビシッとスーツに身を包んだ爽やかな笑顔の男性が一人立っていた。確か彼は……

「初めまして。営業部の佐野司と云います」
「営業部の……」

　そう云って、白い歯と眩しい程の笑顔を見せる佐野さんは“THE 営業マン”と云う感じの男性だった。

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