26.自分ばっかり……なあなたへ ページ4
〆．
どうして私ばっかり。
どうして、どうして………。
「………A？」
「っ、！！」
「具合悪いんか？」
私の前に向かい合うように座ったのは、同じゼミの重岡大毅。
「あ、ううん！ちょっと眠くてぼーっとしてた」
えへへ、と笑うと
そっか、と返ってくる。
具合が悪いんじゃない。
機嫌が悪い。焦りと苛立ちに飲み込まれている。
ゼミに入る前から担任の先生とは仲が良かった。
私の興味ある分野と先生の専門分野が被っていたから、よく質問もしたし講義も聴講した。
一度単位を取った授業ですらもう一度出席するくらいで。
そんなことをしていれば、先生の目には必ず止まるし、人よりも多くの知識を得ることが出来た。
その代償がこれ、と言っていいだろう。
「………Aって先生に気に入られてんねんな？」
「そうみたい」
先生の研究のお手伝いをさせてもらう機会が増えて、ゼミが始まってもそれは変わらなかった。
ゼミの学生数は三年が８人。四年が４人。
就活が終わった先輩一人と私がよくお手伝いで呼ばれる。
三年はみんな忙しさの条件が同じなのに、なぜか私ばかりに声がかかる。
先生曰く、声をかけやすい……とのことだったけれど、負担がかかるのに違いはない。
贅沢な悩みだと思う、有難いことなのに。
「……思うんやけど、先生Aにばっか任せすぎちゃう？」
「……………私に、ばっかり」
ずーっと思っていたことだ。
なんで私ばかりがこんな思いしなきゃならないの。
でも、それを友達に軽く相談してみたら、
「自分ばっかりって思うからつらくなるの、他にも頑張ってる人いるんだからもっと気持ち軽くしなよ！」と言われた。
その言葉は励ましというより、「あんたは他の人より努力が足りない」と責められているように感じた。
もうそんな風に思いたくなくて、愚痴をこぼしたい気持ちに蓋をすることにした。
「そんなことないよ、大毅が全然任されないだけじゃない？もっと先生と仲良くしないと〜」
「……………………せやな」
大毅は不満そうな顔で、私の口にグミを突っ込んだ。
〆．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 538人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sakura - 学校でも何もないのに怖くて怖くて仕方ありません。大分前に完結しているのにすみません。ただ、誰かに聞いてもらいたかっただけなので気にしないでください。かまってちゃんみたいですみません。はゆなさんの作品大好きです。 (2020年8月17日 16時) (
レス) id: be006bfbb1 (このIDを非表示/違反報告)
sakura - はじめまして。中2女子です。リクエストさせていただいてもよろしいでしょうか。私は母子家庭なのですが、母に頼れません。イライラしていても何も悟られないように我慢したり体調不良でも限界まで一人で耐えてしまいます。自分の本当の性格すらわかりません。 (2020年8月17日 16時) (レス) id: be006bfbb1 (このIDを非表示/違反報告)
希都 - それが原因で友達と喧嘩してしまって、自分に非があるのは認めてるし、その子を自分は大好きだから余計辛くてしんどくて。でもそれをさらけ出すのは恥ずかしくて自分が弱いって思われるようで誰にも辛いって言えなくて、って言う女の子を重岡さんに救って貰いたいです。 (2019年8月27日 22時) (レス) id: 6465792da0 (このIDを非表示/違反報告)
希都 - まだリクエスト受け付けてますか、？受け付けてたら、無駄にプライドは高くて素直じゃなくて好きなのに嫌いって言ってしまったり、ありがとうって素直に言えなくて。 (2019年8月27日 22時) (レス) id: 6465792da0 (このIDを非表示/違反報告)
りょーくんえいたー(プロフ) - お久しぶりです。 吹奏楽のお話をリクエストしたものです。 疲れた時は、自分の好きなことを考えると落ち着きます。私的にはですけど…汗 あと、外の景色を見るのもいいかもしれませんね…！ はゆな様には合わないかもしれませんが、頑張ってください！ (2019年8月16日 11時) (レス) id: 0630fea27c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はゆな
| 作成日時：2019年6月20日 18時
