Re:疲れてしまったあなたへ《赤》

31.彼と別れた後もふっきれないあなたへ ページ14

〆．



すれ違っていただけなのかもしれない。今思えば。



私の好きと彼の好きの大きさが違うから、それが不満でついキツい口調になってしまったんだ。



私のことを理解してくれない。



理解しようともしてくれない。



彼が優しさを向けるのは私以外の女の子で、



彼が笑顔を向けるのは私以外の人たちで。



せっかくのデートも、彼のつまらなさそうな顔に居心地の悪さを感じた。



せっかくの料理も、無言で食べ進められるのが気に入らなかった。



夜だって欲だけ満たしておしまい、甘い時間なんてどこかへ行ってしまったかのよう。



だから告げたんだ、別れを。



「あなたといるのが疲れました」



倦怠期……と言われればそうだ。



少なくとも彼は。



そうだったと信じたい。



そういう時期で、だから愛が冷めたように感じた。それだけだったのだと。



そう思ってしまうのは、私が、まだ彼を想っているから。



初めての彼氏であり、ファーストキスの相手であり、全ての初めてを捧げた人。



何人も恋敵がいる中で私を選んでくれたから、余計にべた惚れになっていた。



お揃いで買ったキーホルダーを捨てることが出来ないのはしかたのないことだ。



………なのに、君は納得しなかった。



私が彼を忘れられるように手を尽くしていた。



「…………なんで、Aはあいつしか見えてへんの」



泣きそうとも言える表情で、声を震わせながら届けられた言葉。



「大毅、」



彼に恋をした時。彼と付き合った時。喧嘩した時、デートした時、そして別れた時。



いつも私の話を全部聞いてくれていた大毅が、彼を忘れられないと話した今日、



初めて私の言葉を遮った。



「知ってるか？人間ってな、常に誰かには愛されてんねん。家族かもしれん、恋人かもしれん、友達かもしれん、赤の他人かもしれん。でも、そうやねん」



「な、に？」



「Aがそいつのことを愛してなくても、そいつはAのことを愛してんねん。Aの元彼も、現に今Aに愛されてる。………羨ましくて羨ましくてたまらんわ、ほんま」



大毅の唇が言葉を紡ぎ、体温を私に伝える。



彼とはまた違うキスで、それはあまりにも悲しかった。



〆．

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